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内部統制と業務マニュアルの関係とは?作成のポイントも解説

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公開日:2024.10.23
最終更新日:2025.04.18
内部統制

業務マニュアルは業務を効果的に遂行するために重要です。また、内部統制を整備する上でも、業務マニュアルの作成は必要になります。では、業務マニュアルはどのように作成するのがいいのでしょうか。本記事では業務マニュアルを作成する際のポイントや注意点、内部統制との関係についても解説しています。

業務改善や健全な経営を追求する際に必要な情報となりますので、ぜひ参考にしてみてください。

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内部統制に業務マニュアルが欠かせない理由

業務マニュアルとは、業務プロセスを詳細に文書化した書類であり、業務の概要や業務フローなどを記載します。内部統制上は、業務マニュアルを整備することによって、作業者による業務のバラつきを解消することができます。バラつきを解消することで、内部統制の有効性を高めることができるため、内部統制を整備、運用、評価するうえで、業務マニュアルは欠かせません。

業務マニュアルを作成する4つの効果

内部統制において、業務マニュアルには以下の4つの効果が期待できます。

・業務品質の安定化

・OJTの効率化

・属人化しないオペレーションの実現

・業務の効率化

それぞれ詳しく見ていきましょう。

業務品質の安定化

業務マニュアルを作成する理由は、業務の品質を安定させるためです。誰が作業しても同じ品質の業務を実施できる状態を目指します。業務マニュアルには業務の概要や全体フローの詳細が記載されており、これを社内共有することで、その業務に関わる従業員がどのように業務を行えばいいかが理解できます。

OJTの効率化

業務マニュアルの作成は、人材育成にかかる時間を削減できます。マニュアルを読むことで基本的な業務プロセスの説明が省略され、教育者が教育や引き継ぎにかかる時間の節約が可能です。新入社員の教育や業務の引き継ぎなど、業務マニュアルの存在により効率的な人材育成が可能となります。

属人化しないオペレーションの実現

業務マニュアルの作成には、業務の属人化を防ぐという効果も期待できます。業務が属人化した状態とは、特定の担当者への依存度が高く、その人物が不在である場合に業務が滞る状態です。例えば、業務担当者がやむを得ない理由により退職になった場合、他の従業員が業務に対応できないという問題が生じます。業務マニュアルが整備されていれば、誰でも同様の手順で業務を実施できるため、属人化を防ぎ、業務トラブルなどを未然に防ぐ効果が期待できます。

業務の効率化

業務マニュアルを作成することで、従業員は都度質問をしたり、上司に確認したりする手間が省けます。よって、コミュニケーションコストが下がり、業務の効率化に繋がります。

また、やるべきこととやらなくてもいいことを業務マニュアルに記載することで、不必要な業務の発生を防ぐこともできます。

業務マニュアルを作成する際の注意点

業務マニュアルを作成する際の注意点は以下のとおりです。

・業務マニュアルの完成までに労力がかかる

・業務マニュアル通りの行動がゴールではない

・5W1Hを明確にする

・業務の全体像が分かるようにする

・分かりやすい構成にして、難しい用語は使わないように留意する

それぞれ解説します。

業務マニュアル作成の完成までに労力がかかる

業務マニュアルの作成には時間と労力がかかります。この課題に対処するためには、テンプレートやITツールの活用が効果的です。例えば、WordやExcelのテンプレートを活用することにより、一般的な業務マニュアルを作成できます。

資金に余裕がある場合は、マニュアル作成ツールを利用することで、手軽にマニュアルを作成し、業務効率向上が図れます。

業務マニュアル通りの行動がゴールではない

業務マニュアルの作成において、よく勘違いされるケースでは、業務マニュアル通りに行動することがゴールだと思っていることです。従業員がマニュアルに書かれていることだけを守れば問題ないと思い込むことによって、トラブルへの適切な対応が難しくなります。

解決策として、業務の意味や経緯などを盛り込み、なぜその業務が必要であるかを従業員に伝えます。理解できない点は、コミュニケーションを交えて理解するまで説明を行います。

ときには、マニュアルに頼らずに臨機応変に対応することが重要であることもマニュアル作成時に盛り込みましょう。

5W1Hを明確にする

「5W1H」はWho、When、Where、What、Why、Howの略語です。業務マニュアルの作成時には、業務について「Who(誰が)」「When(いつ)」「Where(どこで)」「What(何を)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」実施するかを明確に記載します。これにより、読み手に分かりやすく効果的に漏れなく情報を伝えることが可能です。また、業務フローや目的が明確に伝わり、組織内での理解と実行がスムーズに進みます。

業務の全体像が分かるようにする

業務マニュアルを作成する際は、業務の全体像が分かるように構成することが必要です。文字だけのマニュアルではなく、図や表を活用した「フローチャート」を導入することで視覚的な理解を促進できます。

たとえば、営業の業務マニュアルを作成する場合「問い合わせ対応」から始まり、次に「スケジュール調整」を行い、その後「商談」を経て「受注」へ進む一連の流れを示すことで、業務全体の把握が可能です。この視覚的な表現は、関連部署との連携を円滑にし、業務プロセスをより理解しやすくします。

分かりやすい構成で難しい用語は使わないように留意する

業務マニュアルは分かりやすい構成をとり、難しい用語をなるべく使わないようにすることも重要です。例えば、目次を作成することによって、従業員は必要としている情報を、素早く正確に取得できます。

また、短い時間で効率よく読めるように、短文かつ誰でも分かる表現で記載するのがポイントです。これにより、誰もが同じレベルで理解できる読みやすいマニュアルが作成できます。

業務マニュアルの具体的な作成手順

業務マニュアルの作成手順は以下3ステップです。

1.業務を洗い出す

2.マニュアルの構成要素を決定する

3.マニュアルを作成する

各項目についてそれぞれ解説します。

業務を洗い出す

業務マニュアルを作成するためには、業務範囲を設定し、業務を洗い出すところから始めます。業務の目的や基準、範囲の設定が不十分だと、マニュアルの機能が十分発揮されません。

例えば、営業マニュアルを作成する場合、どこまでの業務を営業とするのか、誰向けのものなのか、などを明確に設定します。このように、準備段階での明確な定義が、後のステップにおいてスムーズで効果的なマニュアル作成につながります。

マニュアルの構成要素を決定する

業務を洗い出した後は、具体的なマニュアルの構成要素を決定します。例えば、営業マニュアルの場合、問い合わせ対応、スケジュール調整、商談、受注、といったフェーズや、各商談を管理するためのツールの使い方、などの構成要素を決定する必要があります。このようにアウトラインを作成することで、文書化した際の手戻りを防ぐことができるのです。

マニュアルを作成する

マニュアルの構成要素を決定した後は、いよいよマニュアル作成に取りかかります。このときにも手順漏れや不必要なプロセスがないかを再度確認が必要です。認識の相違により後々のトラブルに発展しないためにも、できる限り言語化を行い、初めて携わる人の視点を意識してマニュアルを作成します。

業務マニュアルをベースに内部統制(J-SOX)の3点セットを作成する

内部統制(J-SOX)の3点セット作成は、内部統制の属人化を防ぐだけではなく、内部統制が本当に有効かを客観的に見直す機会にもなります。

そこで本章では、内部統制のマニュアル化で重要な「業務記述書の作成」「フローチャート作成」「リスクコントロールマトリクスの作成」の3点セットについて解説します。また、これらは既存の業務マニュアルをベースに作成することで文書化の負担を軽減することもできます。

業務記述書の作成

業務記述書の作成により、企業の財務報告に関連する業務内容や手順が一目で分かるようになります。業務記述書の作成を進めることで、業務内容の正確な理解と、リスク・コントロールの初期的な検討も同時に行うことができます。既存の業務マニュアルを元に、財務報告に関連する業務内容の業務記述書に書き直すことで、改めて内部統制(J-SOX)目線で業務の分析を行いましょう。

フローチャートの作成

フローチャートの作成は業務のプロセスを図で表し、業務の流れや会計処理、関連するシステムやデータの流れを明示します。作成する目的は、業務記述書の内容を視覚的にわかりやすく把握するためです。

フローチャートの作成により業務取引と会計処理の流れを可視化し、組織全体の業務プロセスの理解度が向上します。これにより、内部統制上のリスクやコントロールを識別しやすくなる効果が期待できます。

リスクコントロールマトリクス(RCM)の作成

リスクコントロールマトリクスは、業務上想定されるリスクとそれに対応する統制活動(コントロール)の関係を明確にするために作成される表形式の書類です。作成の目的は、業務上のリスクと統制活動の関連性を明確にすることです。

リスクコントロールマトリクスの作成時に、各業務において想定されるリスクを特定し、リスクに対応した統制が存在するか、その統制は有効なものか、を評価します。

想定されるリスクについては、以下の記事を参考にしてください。

内部統制におけるリスクとは?リスクの評価と対応の重要性と手順

業務マニュアル作成後の確認

業務マニュアルを作成した後は、業務マニュアルが正常に運用されているかをモニタリング(監視)する必要があります。業務マニュアルが完成しても、誰もマニュアル通りに業務を遂行していなければ意味がありません。そのため、定期的なモニタリングを行い、業務の適正性を確保します。全ての業務をモニタリングすることは難しいため、重要な領域に集中して確認することもモニタリングのポイントです。

モニタリングの詳細については、以下の記事を参考にしてください。

内部統制のモニタリングとは|内部統制の基本からモニタリングの具体例まで公開

まとめ

業務マニュアルを作成する際のポイントや作成時の注意点、内部統制との関係性についての理解は深められたでしょうか。業務マニュアルの作成により、業務品質が安定し、OJTが効率化され、業務の属人化を防ぎます。これらにより業務の品質向上が期待できます。

マニュアル作成は時間と労力を費やしますが、業務の効率性・有効性を向上させ、内部統制を強化するためにも欠かせないものです。本記事に記載された注意事項やポイントにご留意いただきながら、業務マニュアルを作成してみてください。


Co-WARCについて

Co-WARCでは、内部統制構築、J-SOXの立ち上げ支援を含め、コーポレート課題全般の支援を行っています。

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