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内部統制とコンプライアンスの違いとは|押さえるべきポイントを紹介!

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公開日:2024.01.12
最終更新日:2025.04.08
内部統制

「内部統制」と「コンプライアンス」は、企業運営の重要な柱ですが、混同されがちです。本記事では、これら2つの概念の違いを明確にし、それぞれの役割と重要性を解説します。

効果的な内部統制とコンプライアンス体制を構築して維持するためのポイントも紹介します。効果的な内部統制とコンプライアンス体制を構築することで、社会から信頼される会社をつくることが可能です。

本記事を通じて、内部統制とコンプライアンスの重要性を理解できるようになるでしょう。

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「内部統制」と「コンプライアンス」

企業経営において、「内部統制」と「コンプライアンス」は非常に重要な役割を果たします。これらは、企業が効率的かつ効果的に運営されることを確保し、企業の持続可能性と成長を支える基盤となります。

内部統制は、企業がその目標を達成するために必要な仕組みです。内部統制システムを通じて、組織全体の意思決定プロセスが強化され、経営効率の向上につなげることができます。

一方、コンプライアンスは、企業が法律、規範、倫理に従うことを指し、企業の社会的責任の遵守を含みます。コンプライアンスの遵守は、企業が社会的信頼を獲得し、長期的な成功を確保するために不可欠です。

コンプライアンスに関する取り組みを通じて、企業は従業員に対して適切な行動基準を提供し、倫理的かつ法律に則った行動を促進します。

「内部統制」と「コンプライアンス」の違いとは?

「内部統制」と「コンプライアンス」は、企業経営において混同されがちですが、実際には異なる概念です。

内部統制は企業がその目標を効率的に達成するために必要なプロセス、システム、手続を指し、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動にかかわる法令等の遵守、資産の保全を目的としています。

一方、コンプライアンスとは法令遵守という、より広範な意味を持ち、企業が法律、倫理、社会規範に従うことです。

つまり、内部統制は組織内のプロセスであり、コンプライアンスは内部統制などによって企業が守らなければならない法律、規則、社会的なモラルを遵守することを意味します。両者は相互に関連し合いながらも、異なる点があります。

「内部統制」について

「内部統制」は、企業が目標を効率的かつ効果的に達成するための仕組みです。

これには、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、法令遵守、資産保全などの目的を達成するためのプロセスが含まれます。

内部統制の枠組みは、統制環境、リスク評価、統制活動、情報と伝達、モニタリング活動、ITへの対応の6つの要素から成り立っています。

企業は、これらの要素を活用してリスクを見つけ、評価し、対策を講じましょう。これにより、業務効率の向上、資産の損失防止、財務報告の正確性の維持、法令遵守を推進します。これは、企業の持続可能な成長と成功に寄与するでしょう。

内部統制は、企業のリスク管理と組織運営の質の向上に不可欠であり、常に環境の変化に適応し、進化させていく必要があります。

「コンプライアンス」について

「コンプライアンス」は、企業が遵守すべき法律、規範、倫理などを指します。

これは単に法律を守ることにとどまらず、企業が持つ社会的責任や倫理的義務を果たすことも含まれます。コンプライアンスは、企業の存続と成功に不可欠な要素であり、消費者や取引先、社会全体からの信頼を得るために重要です。コンプライアンス違反は、法的な罰則だけでなく、企業の評判やブランド価値にも大きな損害を与える可能性があります。

したがって、企業は法規制の遵守に加えて、社内規程や倫理基準の設定、従業員に対する教育や研修をにより、適切なコンプライアンス文化を築くことが求められるでしょう。

また、コンプライアンスは企業理念や価値観とも密接に関連しており、企業の社会的責任(CSR)や経営の持続可能性にも大きく寄与します。

内部統制とコンプライアンスとの関係

内部統制とコンプライアンスは、企業経営において相互に依存し合う重要な考え方です。

コンプライアンスとは、企業とその従業員が法律、社会的な規範、倫理等を遵守することを強調する概念で、中心には「法令遵守」があります。これは、企業の行動規範として不可欠な要素です。

一方、内部統制とは、企業が特定の目的を達成するためのプロセスを管理し、リスクを適切に評価し対応するためのシステムや手順です。

会社法では、内部統制システムの一部として、従業員の職務が法令及び定款に適合することを確保する体制の整備を要求しています。

このことは、コンプライアンスが内部統制の重要な目的の一部として位置付けられていることを示しています。

したがって、内部統制は、コンプライアンスの確実な遵守を支え、企業が信頼と責任を持って運営されるような基盤を提供するものです。

「コンプライアンス」のための内部統制

コンプライアンスを法令等の遵守と理解する場合、内部統制とは、法令遵守から社会規範や企業倫理の遵守までをカバーし、企業が直面するそれに関するリスクを最小限に抑える役割を果たすための体制です。

この意味で、内部統制とは、法令遵守から社会規範や企業倫理の遵守を従業員に徹底するための仕組みと考えられます。内部統制では、適切な統制環境の確立、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング、ITへの対応という6つの基本的要素を重要視します。

例えば、統制環境を構築するために、経営者は倫理規範を設定し、社内にコンプライアンス文化・意識を醸成しなければなりません。リスクの評価と対応では、潜在的なコンプライアンス違反のリスクを特定し、これに対する対策を計画します。

さらに、統制活動を通じて、従業員は日々の業務においてコンプライアンスに対する意識が求められ、情報と伝達では、適切なコンプライアンス関連情報の共有が行われます。モニタリングによって、統制活動の効果が定期的に評価され、必要に応じた改善が必要です。

このように、内部統制はコンプライアンスを実現し、企業のリスク管理と運営の質を高めるための基礎を提供します。

「コンプライアンス」を強化する内部統制

内部統制の構築は、コンプライアンスの強化にも直接貢献するものです。

企業が法令だけでなく、社会的責任や倫理規範を遵守するためには、単にルールを設けるだけでなく、それらが社内で働く従業員全体に理解され、実践される必要があります。

内部統制システムを通じて、企業はコンプライアンス関連のリスクを評価し、これに対応するための方策を策定できるでしょう。例えば、内部通報システムの設置やコンプライアンス研修の実施は、従業員がコンプライアンス違反を報告しやすい環境をつくり、企業文化としてのコンプライアンス意識を高める助けとなります。

また、ITシステムの活用により、コンプライアンス関連の情報を迅速かつ正確に共有し、組織全体でのコンプライアンス意識の向上に貢献するでしょう。

内部統制の各要素は、コンプライアンスを組織の基本的な部分として統合し、企業がより透明性の高い、信頼性のある運営を行うことを支援します。

「ガバナンス」と「コンプライアンス」知っておくべきポイント

企業経営において、「ガバナンス」と「コンプライアンス」は密接に関連し、企業の持続的な成長と信頼の構築に不可欠な要素です。

コンプライアンスは法律や規律の遵守を指し、ガバナンスはコンプライアンスを達成するための体制を指します。

効果的なガバナンスとコンプライアンスは、企業のリスクを管理し、透明性を高め、ステークホルダーの信頼を獲得するために重要です。

ガバナンスについては、以下の記事を参考にしてください。

内部統制とコーポレートガバナンスの違いとは?|2つの関係やそれぞれについて解説

ガバナンスとは? 

ガバナンスは、企業経営者の意思決定プロセスと組織運営の枠組みです。

企業経営者が、法令などを遵守しながら適切に意思決定を行い、会社全体にそのための仕組みをつくり出す意識を醸成するためのものです。

したがってガバナンスには、経営者の責任、権限の配分、アカウンタビリティ、内部監査システムの整備などが含まれます。

良好なガバナンスは、企業の戦略的目標達成、リスク管理、効果的なリソース配分、利害関係者との関係の強化に貢献し、結果的に企業価値の向上につながるでしょう。

また、経営陣と株主、従業員、顧客、社会などのステークホルダー間の調和を促進し、企業の透明性とアカウンタビリティを向上させます。

ガバナンスによるコンプライアンス

効果的なガバナンスは、コンプライアンスを強化します。

ガバナンスの枠組みをつくることにより、法令遵守だけでなく、企業倫理や社会規範の遵守も促されるでしょう。

このプロセスには、適切なポリシーの策定、教育とトレーニングの実施、内部監査システムの確立、不正行為や違反に対する明確な対応ガイドラインの設定などが含まれます。

これにより、企業は法的リスクを最小限に抑え、社会的責任を果たせるため、ステークホルダーからの信頼獲得につながるでしょう。

情報管理にガバナンスを意識する

情報管理におけるガバナンスの実施は、企業のデータ保護、プライバシー遵守、情報の安全性と整合性を確保するために重要です。

データ管理に関するガバナンスの枠組みは、情報の適切な収集、保存、利用、廃棄に関するポリシーを設定し、これを遵守します。

これにより、企業はデータ漏洩や不正アクセスなどのリスクを防ぎ、法規制への準拠を保証し、顧客の信頼を維持することが可能です。

企業が信用を得て競合に対して優位になることができる

良好なガバナンスは、企業が市場において競合他社に対して優位に立つための重要な要素です。

これらの実践により、企業はリスク管理を強化し、組織の透明性と信頼性を高め、最終的には投資家、顧客、従業員、その他のステークホルダーからの信頼を獲得します。

企業の評判と信頼は、顧客のロイヤルティ、市場でのブランド価値、投資の魅力を高め、結果として企業の競争力と持続可能な成長を促進します。

コンプライアンスを起点とした内部統制システムづくりのポイント

コンプライアンスを基盤とした内部統制システムの構築は、企業の運営にとって不可欠です。

法令遵守だけでなく、企業倫理や社会規範の遵守も含まれるコンプライアンスは、企業のリスクを軽減し、信頼性を確保する上で重要です。

内部統制システムは、このコンプライアンスを実現し、企業全体の運営を効果的に管理するための枠組みを提供します。

システムづくりの際には、特に役割の明確化と全社的な取り組みが鍵となります。

内部統制のシステムについては、以下の記事を参考にしてください。

内部統制システムとは?|会社法なども引用して解説!

それぞれの役割を明確にする

内部統制システムにおける役割の明確化は、その成功の基礎となるものです。

まず、経営層は内部統制の重要性を理解し、全社的な取り組みをリードする必要があります。さらに、内部統制の方針を策定し、組織全体にこの方針を浸透させる責任を負っていると自覚することが大切です。

また、内部統制を管理する専門部門や担当者を設けることで、日々の運営におけるコンプライアンスの遵守を確実にします。

これには、リスク管理、法令遵守、業務プロセスの監視、内部報告システムの確立などが含まれます。

役割と責任が明確にされることで、各個人と部門は自らの役割を理解し、効果的に内部統制に貢献できるでしょう。

会社全体で取り組む

内部統制システムは、企業全体の取り組みによって初めて効果を発揮します。

全従業員が内部統制システムの重要性を理解し、日々の業務においてコンプライアンスを意識する文化を醸成することが不可欠です。

そのためには、従業員に対する継続的な教育とトレーニングが必要になるでしょう。

また、内部統制に関するポリシーや手順を全社員に明確に伝え、理解を促すことも重要です。

さらに、従業員がコンプライアンス違反を報告しやすい環境づくりや、違反行為が発覚した場合には適切な対応ができる体制を整えることも、内部統制システムの成功には不可欠です。

会社全体でコンプライアンスと内部統制の意識を共有し、実践することで、企業はリスクを管理し、長期的な成長を実現できます。

内部統制とコンプライアンス実践のポイント

内部統制とコンプライアンスの実践は、企業の持続可能な成長と信頼性の維持に不可欠です。これらを効果的に実施することで、企業はリスクを管理し、法令違反を防ぎ、企業倫理を高めることができます。

しかし、単にシステムを設置するだけでは不十分で、形骸化を防ぎ、企業行動規範を意識した実践が求められます。

「形骸化」を防ぐ

内部統制とコンプライアンスの形骸化とは、それらが名目上のみで、機能していない状態を指します。

例えば、内部監査部門を設置しても、内部監査部門が経営者の取組みをチェックしていないとすれば、内部監査部門は形骸化しているといえるでしょう。

形骸化を防ぐためには、まず、内部統制の整備及び運用に対する経営層からの強いリーダーシップとコミットメントが必要です。

経営層は、内部統制とコンプライアンスの重要性を理解し、全社的な取り組みを推進するべきです。さらに、定期的な内部統制システムの見直しと評価を行い、継続的な改善を図る必要があります。これには、リスクの識別、評価、対策の実施、効果のモニタリングが含まれます。

また、従業員に対しては、適切なトレーニングと教育を提供し、彼らのコンプライアンス意識を日常業務に組み込めるようにする必要があります。内部通報システムの設置や活用も、形骸化を防ぐ上で重要です。これにより、従業員が違反行為や懸念事項を安心して報告できる環境が整います。

「企業行動規範」を意識する

コンプライアンス実践においては、企業行動規範の確立と徹底が重要です。

企業行動規範は、企業の倫理基準と行動原則を示すもので、従業員が日常業務において遵守すべきガイドラインとなるものです。企業行動規範を実効性のあるものにするためには、全従業員がその内容を理解し、受け入れる必要があります。

そのためには、定期的な研修と教育、行動規範に基づいた意思決定の促進、違反事例の共有と分析が効果的です。

企業の行動規範は、その企業の文化や価値観と一致するものでなければなりません。また、これらの規範は時代とともに変化するため、定期的な見直しと更新が必要です。これにより、企業は社会の変化に対応し、その信頼性と評価を維持できるでしょう。

このプロセスには、ステークホルダーからのフィードバックを取り入れることも重要です。ステークホルダーエンゲージメントといった取組みによって、会社の外部者と対話することが求められます。

内部監査とコンプライアンスは兼任できるのか

内部監査とコンプライアンスの兼任は、特定の条件下で、かつ適切な管理とガバナンスが行われる場合に限り可能ですが、両者の性質や意味合いには明確な違いがあります。

内部監査は、企業のリスク管理、コントロール、ガバナンスプロセスの有効性を評価する独立した機能です。一方、コンプライアンスは遵守すべき法令や企業の倫理、または法令や企業倫理を遵守した状態を意味するものです。

通常、会社のコンプライアンスは法務部門や専門のコンプライアンス部門が担当します。

会社のコンプライアンスを推進する法務部門と各部門が適切に業務を行うかをチェックする内部監査部門の兼任は理論的には可能ですが、いくつかの重要な注意点があります。

最大の課題は、内部監査の独立性を維持することです。内部監査は独立性を保ち、客観的な評価を行う必要があるため、自己監査の状況を避ける必要があります。

例えば、法務部門の業務を内部監査部門が監査する場合、法務部門に所属しないメンバーがその監査を実施することが望ましいです。また、内部監査担当者がコンプライアンス関連の業務を担当する場合、その監査活動の独立性が損なわれる恐れがあります。

そのため、兼任を行う際には、役割と責任の明確な分離、透明性の確保、そして内部監査の独立性を維持するための適切なガイドラインやポリシーの策定が必要です。

このように、内部監査とコンプライアンスの兼任は特定の条件下で、かつ適切な管理とガバナンスが行われる場合に限り可能です。

しかし、これには潜在的なリスクが伴い、独立性と客観性を損なわないよう細心の注意を払う必要があります。企業がこのような構造を選択する場合は、両機能の役割を厳格に定義し、適切なバランスを保つための明確な方針とプロセスを策定することが不可欠です。

まとめ

内部統制とコンプライアンスは、企業の健全な運営と成長に不可欠な要素ですが、それぞれに異なる焦点と役割があります。

内部統制は企業の目標達成を支援するためのプロセスであり、業務の有効性や効率性、財務報告の信頼性、法令遵守、資産保全に重点を置きます。一方、コンプライアンスは法令や規範、倫理に従うことを指し、企業が社会的責任を果たすために求められるものです。

成功する内部統制とコンプライアンス体制の構築には、組織全体のコミットメントと継続的な教育が必要です。また、これらのシステムは柔軟であるべきで、定期的な見直しと改善が不可欠になるでしょう。効果的な内部監査機能を持つことで、組織の内部統制とコンプライアンスプログラムの有効性を評価し強化できます。

本記事を通じて、内部統制とコンプライアンスの重要性を理解し、これらを組織の文化として根付かせることの価値を認識していただけたらと思います。企業の信頼性と競争力を高めるために、これらの概念を適切に実践することが不可欠です。


Co-WARCについて

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