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IPO準備に必要なこととは?スケジュールや期間別にやることを紹介

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公開日:2024.10.10
最終更新日:2025.04.18
内部統制

IPO準備には、さまざまなプロセスがあります。本記事では、IPO準備におけるN-3期からN期までのスケジュールやフローを解説します。各期に実施すべき事項を紹介したうえで、IPO準備のポイントにも触れるので、ぜひ参考にしてみてください。

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IPO準備とは

IPO(Initial Public Offering、新規公開株式)準備とは、企業が証券取引所に株式を上場し、IPOするために必要な審査基準を満たすべく、社内体制を整える作業を指します。

IPOとは、株式を証券取引所に上場したうえで、初めて公に対して株式を発行することを意味します。上場会社になると、金融機関からの借り入れに加えて公開された株式市場からの資金調達が可能となり、企業の知名度向上や事業拡大、人材確保などのメリットが期待されます。

ただし、どの企業でもIPOができるわけではなく、市場ごとに定められた上場審査基準を満たす必要があります。IPO準備を始めても、基準を満たせずに断念する企業も少なくありません。

IPOを実現するためには、無理のないスケジュールを立て、多くの関係者の協力を得ながら計画的に準備を進めることが重要です。

IPOについては、次の記事を参考にしてください。

準備にかかる時間

IPOは、準備を開始してからすぐに実現できるものではなく、通常は3年前後を要する長期的なプロジェクトです。最終的には証券取引所の審査をクリアする必要がありますが、準備不足により審査を通過できない場合もあります。

希望するタイミングでIPOを果たすためには、プロジェクト全体のスケジュールや各段階でクリアすべき要件を正確に把握しておくことが重要です。

IPOを行うまでのフロー

それでは、IPO準備のスケジュールを期間ごとに分けて確認していきます。一般的に、申請期の3期前を直前々々期(N-3期)、上場前の最後の2つの会計期間を直前々期(N-2期)と直前期(N-1期)、上場する会計期間を申請期(N期)と呼びます。

直前々々期(N-3期)

前述したように、IPOのためには早期に準備を進めることが重要です。そのため「N-2期の期首以前」に監査法人などの外部専門家を選び、社内でプロジェクトチームを結成するなど、N-2期からIPO準備を始められるような体制を整えることが望ましいと言えます。これがN-3期の準備です。

この時点で対応すべきことは以下の通りです。

資本政策の決定

資本政策とは、事業計画の達成に必要な資金調達と株主構成の計画を指します。策定には、以下の3つの要素のバランスが重要です。

  • 調達金額:どのくらいの金額を調達する必要があるか
  • 持株比率:オーナーや経営陣の持株比率をどの程度維持するか
  • 割当先:誰に株式を発行するか

ショートレビューに備える

監査法人との最初の関わりとなるショートレビュー(予備調査とも言われます)では、インタビューや資料閲覧などを通じて、IPOに向けた課題の特定を行います。

ショートレビューの実施により、会社の現状が把握でき、IPOまでに何をすべきか、そのロードマップが明確になります。

チーム及びスケジュールの計画

会社がIPOするためには多くのリソースが必要です。そのため一般的に、社長自身が準備を行うのではなく、プロジェクトチームを組織して進めます。

IPO準備における主要な課題に対応するチームのリーダーが、プロジェクト全体のリーダーを兼任するとスムーズに進むことが多いため、経営企画やファイナンス部門、経理部門の責任者がプロジェクトリーダーとなることが一般的です。

ショートレビューにおいて浮彫になった課題に対して、属性ごとに横断的なプロジェクト・チームを立ち上げ、解決策やスケジュールを検討します。

主幹事証券会社の選定を開始する

主幹事証券会社はIPOに関して中心的な役割を果たしています。IPOに向けた内部管理体制を整備すること・資本政策の策定など、IPO準備全般にわたって指導・助言を行います。

N-1期に問題なく運用されるようにするため、N-2期前半から後半からN-1期にかけて決定しておくのが理想的です。また昨今は、IPOを目指す企業が多い一方で主幹事証券の引き受け社数には限界があり、主幹事証券の選定に苦戦するケースも多いため、早期に接触することが望ましいです。

直前々期(N-2期)

N-2期は、上場審査に向けて具体的な社内体制の整備を進める重要な時期です。監査法人によるショートレビューの結果と主幹事証券からの課題報告書をもとにして、内部管理体制の強化のため、次のような事項に取り組む必要があります。

また、審査に必要な会計監査の実施や、IPOの成功を左右する資本政策の実行を開始します。ここで解説するのは、内部管理体制の整備です。

N-2期については、次の記事を参考にしてください。

利益管理や業務管理の体制構築を行う

事業計画の策定や予算と実績の管理(予実管理)を実施できる体制を構築します。事業計画と予実管理は上場審査で特に重視される項目の一つです。

適切な事業計画を立案し、予実管理を行うためには、まず自社の損益の実績を把握する必要があります。その後、どのような指標を達成すれば売上が伸ばせるか、その売上を達成するために必要な経費はどのくらいか、どのような人員をどのくらい採用すればよいか、などを逆算して組み立てて予算を作成しなければいけません。

その計画をもとに月次で損益や人員数などの目標値と実績を比較します。なお、予実管理には、原因分析をしながら改善を行っていくことも含まれます。

また、利益管理体制だけでなく、業務管理体制も構築しなければいけません。例えば、反社チェック、与信チェック、労務管理、情報セキュリティの強化、などコンプライアンスや法令遵守に対応した体制の構築が求められます。いかに事業のスピード感を落とさず、業績を伸ばしながら、これらの体制を整えていくか、という攻めと守りのバランスがとても重要です。

会計処理を整理する

IPOを目指す以前、多くの企業は税務会計の基準に基づいて決算書を作成していますが、IPOを目指す場合、投資家保護などを目的とする財務会計の基準に基づいて決算書を作成する必要があります。

また、その決算書は監査法人による監査の対象となるため、遅くともN-2期中には、財務会計基準での決算書作成ができるように、会計制度と決算体制の整備を進める必要があります。

内部統制制度(J-SOX)への対応

IPOを目指す企業にとって必ず取り組むべき準備事項の一つが、内部統制報告制度(J-SOX)です。内部統制は経営者が企業を効率的かつ健全に運営するための仕組みです。金融商品取引法により上場会社には内部統制報告書の作成が義務付けられています。

義務付けられているのは上場会社ですが、IPO準備段階でも将来を見据えて内部統制を整備・運用することが求められます。ただし、上場後3年間は一部の企業を除いて、内部統制報告書(経営者の評価)に関する監査法人等の監査は免除されます(経営者による評価自体は免除されません)。

関連当事者の整理

役員などの関連当事者との取引には、利益相反となる可能性が伴います。そのため、関連当事者との取引がある場合、原則としてその取引を解消する方向で検討する必要があります。解消が難しい場合は、当該取引の価格やその他の条件が客観的に見ても問題ないことを確認したうえで、開示できる体制を整えます。

直前期(N-1期)

N-1期は、N-2期に整備した経営管理体制を1年間試行的に運用する時期です。また、この時期には上場申請書類の作成や開示書類の印刷会社の選定も行う必要があります。

これらのポイントについて詳しく見ていきましょう。

上場に必要な申請書類等の作成

上場申請に必要な申請書類は主に次の2つです。

  • 新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部):企業の主要な経営指標の推移や沿革、事業内容、事業の状況、経理の状況などの詳細な情報を記載した書類です。申請時には、上場直前の2期間の財務諸表と監査報告書を添付します。
  • Ⅱの部(グロース市場上場の場合は各種説明資料):上場の目的、内部監査や監査役監査の状況、従業員の異動状況、調達した資金の使途など、Ⅰの部以上に具体的な記載が求められる書類です。基本的に、上場準備の過程で対応した課題は、すべてこの書類に記載されます。なお、Ⅰの部とは異なり世間一般に開示されることはありません。

申請書類の作成作業は分量が多く専門性も高いため、専門家やコンサルタントに依頼することも検討しましょう。

IPOコンサルについては、次の記事を参考にしてください。

株式事務代行機関(株主名簿管理人)の決定

株式事務代行機関は、株主名簿の管理を行う信託銀行や証券代行業者のことです。IPOの際には、形式的な要件として株主名簿管理人を選定する必要があるため、IPO前に選定しておく必要があります。

開示書類の印刷会社との契約

IPO時およびその後は、さまざまなステークホルダーに対して多くの資料を開示する必要があります。開示書類の印刷会社は、有価証券報告書、株主総会の招集通知など、多様な資料の作成やサポートを担当します。

四半期決算トライアルの実施

N-1期は、IPOのための試験的な期間とも言える時期です。

上場後は45日以内に適時開示をしなければいけません。そのため、N-1期から45日以内に適時開示ができるよう、精度の高い決算、監査法人とのコミュニケーション、決算短信等開示書類の作成ができる体制を構築する必要があります。

四半期決算トライアルは、上場後を見据えた適時開示のトライアルになり、この適時開示の体制が構築できない場合、監査法人からのお墨付きをもらうことは難しいでしょう。

申請期(N期)

IPOの申請を行う際は、上場に必要な審査である、主幹事証券会社の引受審査と証券取引所の上場審査の2つを受けます。審査が無事通過し承認を得た後、IPOに向けた対応を進めます。

上場承認が得られた後、公募・売出しまでの期間は約1カ月しかないため、迅速な対応が求められます。さらに、2023年10月からは「承認前提出方式」を採用することにより、上場承認日から21日程度で上場を行うことも可能になりました。

引受審査を受ける

主幹事証券会社は、証券取引所の上場審査に向けて企業の「推薦書」を作成します。この推薦書作成のために、IPO準備中の企業が上場にふさわしいかどうかを評価するのが「引受審査」です。

引受審査では、主幹事証券会社が提示する質問書に対して企業が回答し、それを基にして資料の確認やヒアリングが行われます。

上場直後に企業の不祥事が発生すると、主幹事証券会社にも責任が発生する可能性があるため審査は厳格に実施されます。

ファイナンス業務を行う

公募・売り出しによって資金調達を行う企業は、主にブックビルディング方式による公募・売り出し価格の検討、有価証券届出書や目論見書の作成・提出などのファイナンス関連業務に取り組みます。

IPO準備のポイント

ここからはIPO準備のポイントを紹介します。IPO準備の失敗を回避するためにも、以下の4点を確認してみてください。

早めに専門家の指導を受ける

IPOを検討する際は、証券会社や監査法人からの指導を早めに受けることが重要です。

上場申請には2期分の監査証明が求められるため、早い段階で監査を受け入れる体制を整える必要があります。会計監査を受けるためには、一定の内部統制が整っていることや、外部の第三者が決算内容を検証できる状況であることが条件です。

監査を受け入れる準備を怠ると、IPOスケジュールの遅れを招く可能性があります。早めに指導を受けて課題を特定することで、IPO準備作業を効率的に進めることができます。

IPOにおける監査法人については、次の記事を参考にしてください。

上場をゴールにしない

IPOを目指す際には、IPOを最終目標とするのではなく、その後の展開も考慮が必要です。IPO後の計画が曖昧なままだと、IPO直後に成長が鈍化し、株価が大幅に下落する可能性があります。

IPOすると、企業は内部統制の強化や順守すべき法律の増加に対応しなければならなくなります。また、企業の社会的役割の遂行も強く求められるでしょう。IPO後も果たすべき責務は多いため、IPOをゴールとすることは避けるべきです。

発生するコストを理解しておく

IPOの準備期間中には、さまざまな費用が発生します。

経営管理体制の見直しや準備作業のための人員確保やシステム導入が必要で、費用が大幅に増加します。

監査法人への監査報酬、証券会社へのコンサルティング費用、証券取引所への新規上場にかかる料金や上場申請書類の作成費用なども必要です。

IPO準備については口外しない

IPO準備に関する情報の中には、会社にとって重要な情報や秘密として保持すべき情報も含まれています。また、従業員には通常秘密保持義務(労働契約または就業規則等で規定されていることが多い)があります。

そのため、口外する情報によっては、秘密保持義務違反に該当する可能性があります。また、IPO準備に関する情報を口外することにより、それを知った第三者が当該IPO準備会社に投資している上場会社の株式を購入するといったインサイダー取引に巻き込まれるケースも考えられます。

したがって、むやみにIPO準備に関する情報について口外するのは避けましょう。

まとめ

IPOは日本語で新規公開株式を意味し、未上場会社が証券取引所に株式を上場することで、投資家に株式を発行することを指します。IPOのメリットは、一般株式市場から広範な投資家から資金調達できること、企業の社会的信頼度の向上が期待できることなどがあります。しかし、IPOの準備は幅広く多様な作業が必要です。

実施を考えている場合は、早めに専門家に相談しつつ、スケジュールを立てて着実に準備を進めていくことが重要であると言えるでしょう。


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