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全社的な内部統制に関する42の評価項目例とは?実施基準の具体的な内容を紹介

内部統制は、企業の財務報告の信頼性を高め、組織運営の透明性を確保するため不可欠です。本記事では、内部統制の有効性を評価するための42の代表的な評価項目を紹介します。42の評価項目例は、実際の事業運営に即して適用され、企業の特性に応じて柔軟に調整されるべきです。本記事を読むことで、内部統制の実施基準と評価項目に関する深い理解を得ることができるでしょう。



内部統制評価の基準・実施基準とは?

「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」(以下、内部統制基準)と「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(以下、実施基準)は、企業の内部統制システムの効果的な評価と監査に必要なガイドラインを提供します。
これらの基準は、会社が内部統制の有効性を評価するために重要です。
内部統制基準・実施基準の目的
内部統制基準は下記のとおりです。
経営者による財務報告に係る内部統制の評価及び報告の基準と監査人による財務報告に係る内部統制の監査の基準の前提となる内部統制の概念的な枠組みを示す
内部統制基準で示された概念的な枠組みに則って、具体的に評価をする際の拠り所となるのが実施基準です。
内部統制基準及び実施基準の目的は、J-SOXに基づく内部統制の評価とそれらの監査を実施するにあたっての考え方や一定のルールを示すことです。
内部統制基準・実施基準の重要性
内部統制基準と実施基準は、J-SOXに基づいて内部統制を評価及びそれらを監査する際に欠かせない要素です。
なぜなら、内部統制は各企業によって異なるため、画一的に評価手法や評価範囲を決めることができず、経営者や監査人が内部統制について評価する際の拠り所となるからです。
評価の拠り所について、正しく理解せずに評価してしまうと、評価範囲の設定をやり直したり、再評価が必要となったり、時間がかかってしまいます。
内部統制基準と実施基準を正しく理解し、自社の内部統制を正しく評価することは、効率的に財務報告の信頼性を保証する上で重要です。
内部統制の評価範囲については、次の記事を参考にしてください。
内部統制の評価範囲とは?評価の基準や決定のフローを順を追って解説
全社的な内部統制に関する42の評価項目例
全社的な内部統制に関する42の評価項目例は、内部統制の6つの要素に関する代表的な評価項目例です。以下では、実施基準に記載された全社的な内部統制に関する具体的な評価項目の例を示します。
統制環境の評価項目
統制環境とは、組織の内部統制フレームワークの土台を形成し、組織の全体的な姿勢、意識、および効果に影響を与える要素群です。
これには、経営陣のリーダーシップスタイル、組織文化、倫理的価値、権限と責任の分配、人材管理ポリシーなどが含まれます。良好な統制環境は、適切なリスク管理、効果的な統制活動、そして組織目標達成のための堅固な基盤を提供します。
内部統制の実施基準において、統制環境の評価項目例としては、次のような項目が挙げられています。
・経営者は、信頼性のある財務報告を重視し、財務報告に係る内部統制の役割を含め、財務報告の基本方針を明確に示しているか。
リスクの評価と対応の評価項目
リスクの評価と対応は、組織が遭遇する可能性のあるリスクを特定、分析、評価し、それに応じた適切な管理策を策定するプロセスです。リスク評価には、潜在的リスクの特定、リスクの優先順位付け、リスクへの対応計画の策定が含まれます。
内部統制の実施基準において、リスクの評価と対応の評価項目例としては、次のような項目が挙げられています。
・信頼性のある財務報告の作成のため、適切な階層の経営者、管理者を関与させる有効なリスク評価の仕組みが存在しているか。
内部統制におけるリスクの考え方については、次の記事を参考にしてください。
内部統制におけるリスクとは?リスクの評価と対応の重要性と手順
統制活動の評価項目
統制活動は、企業の内部統制システムの核心をなす要素であり、リスク管理プロセスを通じて特定されたリスクに対処するためのポリシーや手順を指します。これらの活動は、組織全体にわたる運営の効率性を高め、財務報告の信頼性を確保し、法規制の遵守を促進することを目的としています。
内部統制の実施基準において、統制活動の評価項目例としては、次のような項目が挙げられています。
・信頼性のある財務報告の作成に対するリスクに対処して、これを十分に軽減する統制活動を確保するための方針と手続を定めているか。
情報と伝達の評価項目
情報と伝達とは、組織内外のステークホルダー間で重要な情報が効率的かつ効果的に流通するプロセスです。これには、財務報告、業績管理、リスク管理、コンプライアンス情報などが含まれます。適切な情報伝達システムは、意思決定者がタイムリーかつ正確な情報に基づいて意思決定を行うことを可能にし、組織の全体的な透明性と責任性を高めます。
内部統制の実施基準において、情報と伝達の評価項目例としては、次のような項目が挙げられています。
・信頼性のある財務報告の作成に関する経営者の方針や指示が、企業内の全ての者、特に財務報告の作成に関連する者に適切に伝達される体制が整備されているか。
モニタリングの評価項目
モニタリングとは、組織の内部統制システムの全体的な有効性を定期的に評価し、その結果に基づいて統制の改善を図るプロセスです。これには、内部監査、経営層のレビュー、業務プロセスの自己評価などが含まれます。効果的なモニタリングは、組織が変化するビジネス環境やリスクに適応し、統制システムを硬直化させないために必要不可欠なプロセスです。
内部統制の実施基準において、モニタリングの評価項目例としては、次のような項目が挙げられています。
・日常的モニタリングが、企業の業務活動に適切に組み込まれているか。
内部統制のモニタリングについては、次の記事を参考にしてください。
内部統制のモニタリングとは|内部統制の基本からモニタリングの具体例まで公開
ITへの対応の評価項目
現代の組織において、情報技術(IT)は企業運営において不可欠な要素であり、組織の内部統制にも大きな影響を与えます。適切なITへの対応は、情報の完全性、可用性、および機密性を保証するために不可欠です。
ITへの対応とは、組織がその情報システムを効果的に管理し、情報技術のリスクを軽減し、ビジネスの目標達成に資する方法です。これには、システムのセキュリティ、データの整合性、技術の更新と維持、およびIT環境に関するリスク管理が含まれます。
内部統制の実施基準において、ITへの対応の評価項目例としては、次のような項目が挙げられています。
・経営者は、ITに関する適切な戦略、計画等を定めているか。

全社的な内部統制の評価項目は42項目をベースに個々の企業の特性に合わせて決めてよい
全社的な内部統制の評価項目は、企業の特性や事業環境に応じてカスタマイズされるべきであり、一律の適用ではなく、柔軟性を持たせることが重要です。
実際、本記事でも、実施基準に基づいて内部統制に関する42項目を引用して紹介しました。
全社的な内部統制の評価項目は42項目を基本とするものの、これらはあくまで参考例であり、企業ごとに特有の状況を考慮して適宜修正が必要です。
なお、全社的な内部統制の評価項目は、財務報告の信頼性に特に重要な影響を及ぼす項目を除き、前年度の評価結果が有効であり、かつ重要な変更がない場合には、その評価結果を継続して利用することが認められています。
また、評価項目は、全社的な観点だけでなく、個々の子会社や事業部の単位でも実施されることが一般的です。この場合、各評価単位の特性や財務報告に与える影響の重要性を勘案し、前年度の運用状況の評価結果を継続して利用するか否かを判断します。
内部統制に対して企業の特性を踏まえるべきというアプローチは、企業が直面するリスクや環境の変化に柔軟に対応し、内部統制の効率と有効性を高めることを可能にするでしょう。
したがって、全社的な内部統制の評価項目は、標準化された42項目をベースとしつつも、各企業の特性や状況に合わせて調整を行うことが求められます。これにより、内部統制の評価が企業の実態に即したものとなり、より実効性の高い内部統制の評価が期待されます。
まとめ
全社的な内部統制における42の評価項目例は、全社的な内部統制を評価する際の指針として有用です。
本記事では、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング、ITへの対応、といった内部統制の各要素を包括的にカバーした42の評価項目例を紹介しました。
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