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【一覧】上場準備にかかる費用とは?準備・上場時・上場後に分けて解説
新規株式公開、通称IPO(Initial Public Offering)は、企業が資本市場から資金を調達し、その成長を加速させる大きな一歩です。しかし、上場という目標には、準備段階から上場後の維持に至るまで、多くのステップとそれに伴うコストが発生します。上場に必要な費用は、企業の事業計画に大きく影響するため適切な準備が必要です。本記事では、上場準備にかかる費用をはじめ、上場時および上場後に必要となる主な費用を説明します。本記事を読むことで、上場準備のためにどれほどの費用が発生するかの具体的な目安となるため、ぜひ参考にしてください。


最近の上場会社の規模比較(2023年の上場会社データ)

東京証券取引所(東証)は、多様な企業が資本市場を利用するための環境を提供しており、それに応じて市場区分を細分化しています。
企業経営者は、上場の際、いずれかの市場区分を選択しなければなりません。
東証には、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場、そしてTOKYO PRO Marketという4つの市場が存在します。これらの市場は、それぞれ異なる企業の特性や成長段階に合わせて設計されており、新規上場する企業の規模や業績、投資家との関係性に応じて選ばれます。

注1: IPO時のファイナンス規模=公募 + 売出 (オーバーアロットメント含む)
なお、 TOKYO PRO MarketのIPO時のファイナンス規模は、 特定投資家向け取得勧誘または特定投資家向け売付勧誘等を指すが事例なし
注2: 1億円未満四捨五入
注3: IFRS採用企業については、 「売上高」 = 「売上収益」、 「経常利益」=「税引前利益」、 「純資産の額」=「資本合計」 を記載
注4:プライム市場は2例のみのため、 中央値欄には2社平均を記載
プライム市場は、大規模で流動性が高く、高いガバナンス水準を持つ企業が対象です。ここに上場する企業は、多くの機関投資家にとって魅力的な投資対象となります。そのため、上場準備には相応の資本と体制が求められ、その分、準備にかかる費用も高くなる傾向があります。
スタンダード市場は、一定の市場評価を受けている企業で、基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指す企業向けの市場です。ここに上場する企業は、安定した業績と市場からの一定の評価が求められます。
グロース市場は、特に高い成長可能性を持つ企業を対象としており、これからの伸びしろに注目が集まる市場です。ここに上場する企業は、事業計画の進捗を適時に適切に開示することが求められ、その実現可能性に対する市場の評価が鍵となります。上場準備の費用は相対的に低めですが、投資家に対する期待の管理が重要です。
最後に、TOKYO PRO Marketは、特定の投資家向けの市場であり、取引所から認定を受けたJ-Adviserが上場審査やサポートを行います。この市場は、プロの投資家向けの市場であることから、上場基準が他の市場に比べ緩和されています。
これらの市場ごとに上場準備に必要な費用が異なるため、企業は自社の状況と目指す市場を照らし合わせて適切な選択を行う必要があります。こうした市場の特性を理解することで、準備にかかるコストと労力、そして期待できるリターンを見極めることができます。
東証については、次の記事を参考にしてください。
上場準備で必要となる費用

上場を目指す企業にとって、準備段階での費用は大きな関心事です。上場準備には様々な専門家の協力が必要であり、必ず発生する費用と場合によって発生する費用があります。具体的な費用を理解し、計画的に準備を進めることが大切です。
必ず発生する費用
- 監査法人に対する費用
- 主幹事証券会社に対する報酬
- 証券印刷会社に対する費用
- 株式事務代行機関に対する費用
場合によって発生する費用
- IPOコンサルティング会社に対する費用
- 弁護士に対する費用
- 税理士・社労士に対する費用
上場する市場ごとに必要となる費用は異なりますが、一般的に上場には数千万円から数億円の費用が見込まれます。
監査法人に対する費用
監査法人への費用(監査報酬)は、会社の規模、業務の複雑さ、そして業界の特性によって大きく変動します。特に上場を目指す企業では、会計監査を受けなければなりません。
参考までに、グロース上場企業の監査報酬のボリュームゾーンは年間1,000万円から2,500万円程度となります。最新の会計基準の適用と会計処理の適正化は、公正かつ透明な財務報告を保証するために不可欠であり、投資家や市場からの信頼を獲得するための基礎となるものです。
監査法人は、財務諸表が会計基準に従って作成されているかを検証するとともに、内部統制の有効性を評価します。これにより、企業が適切な財務報告を維持し、潜在的な問題を早期に特定して対処することが可能です。
上場準備中、特に上場直前の2期にわたって、監査報酬が大きく増加する可能性があり、企業は予算計画の策定においては十分に考慮する必要があります。
IPOでの監査法人については、次の記事を参考にしてください。
主幹事証券会社に対する報酬
主幹事証券会社への報酬は、年間数百万程度からそれ以上が一般的とされています。主幹事証券会社、特に公開引受部門は、上場プロセス全体のコーディネートを担い、上場に至るまでの道のりで発生する様々な課題についてサポートしてくれます。
上場審査の準備とプロセスの進行を円滑に進めるため、主幹事証券会社は会社(発行体)と密接に協力して作業を進めます。この協力関係は、上場成功の鍵となり、企業が市場で適切に評価され、投資家からの資金を効果的に集めることができるようにします。
主幹事証券会社については、次の記事を参考にしてください。
証券印刷会社に対する費用
証券印刷会社に対しても、印刷の依頼料及びシステム利用料として費用が発生します。上場申請書類の印刷は、専門の印刷会社に依頼するのが一般的です。
上場申請書類として物理的に印刷するものは、Ⅰの部、Ⅱの部(各種説明資料)、目論見書、有価証券届出書などです。以前よりは電子化が進み、印刷する部数は減少しているものの、印刷作業自体は残っています。また、印刷だけでなく、適時開示システム(TDnet)での決算短信や適時開示書類を提出したり、EDINETでの半期報告書や有価証券報告書の提出したりするうえで、証券印刷会社が提供する専用のシステムを利用することが必要になります。
株式事務代行機関に対する費用
株式事務代行機関(株主名簿管理人)に支払う費用は、上場企業の場合年間数百万程度発生します。この費用には、株主名簿の管理や株主総会招集通知の発送など、株式に関する多岐にわたる事務処理が含まれます。株式事務代行機関は株主からの問い合わせ対応や法的要件の遵守支援なども提供し、企業が株式市場での信頼性を保つ上で中心的な役割を果たすでしょう。なお、各証券取引所では、上場する会社に対して、株式事務代行機関への委託を義務付けています。
IPOコンサルティング会社に対する費用
IPOコンサルティング会社に対する費用は、一概には言えません。月数万円程度で助言だけを求めるのか、月百万円以上で上場申請書類の作成や監査対応など広範にサポートするのか、などケースバイケースです。IPOコンサルティングサービスを提供している会社ごとに、金額や提供可能なサービスが異なるので、各社に対して相談・確認が必要になります。ただし、上場準備期間に発生する業務は分野が多岐に渡り、なかには中長期的な対応が必要なものもあるため、上場準備を包括的にサポートしてくれる会社の方が自社の負担が少なくて済む可能性があります。
弁護士に対する費用
株式上場の過程では、法的な精査が必要なケースもあり、このためには弁護士の専門的なアドバイスが必要です。特に、独占禁止法、景表法、薬機法、下請法、商標法、その他労働関連の法律などチェックポイントが多岐に渡るケースが多いので、リスクや業種を鑑みて、主幹事証券会社より法務DDの実施が求められることもあります。その場合、顧問料の他に、別途、報酬などを支払う必要があります。
税理士・社労士に対する費用
上場準備には、税理士、社会保険労務士(社労士)への報酬が場合によっては顧問料とは別に必要となります。上場準備の過程で、複雑な税務処理が発生したり、労務DDが必要になる場合が該当します。
上場時に必要となる費用

上場を目指す企業が計画段階で必ず考慮しなければならないのは、上場時に必要な費用です。これには上場審査料、新規上場料、株式の公募や売出に関連する費用、登録免許税、そして証券会社への引受手数料などが含まれます。これらの費用は市場の区分、公募や売出の規模、そして企業の設立や登記に関わる法的要件によって異なり、上場を成功させるためにはこれらの費用を効果的に管理し、計画的に資金を準備する必要があります。
上場審査料
上場審査料とは、企業が証券取引所に上場申請をする際に支払う必要がある料金で、証券取引所が申請企業の審査を行う費用です。この料金は、市場の区分によって異なり、2022年4月4日以降、東証は市場をプライム市場、スタンダード市場、グロース市場の三つに再編しました。
各市場における上場審査料は以下の通りです(詳細は日本取引所グループの公式サイトを参照)。

上場審査料は、上場希望市場の特性と要件に応じて設定されています。プライム市場のように大企業や成熟した企業が多く集まる市場ほど、審査料も高くなっています。
新規上場料
新規上場料とは、企業が株式を証券取引所に上場する際に支払う料金です。この料金は、証券取引所が新規上場申請を受け付け、その処理を行うためのコストをカバーするものです。2022年4月4日以降の東証の市場再編に伴い、新規上場料も市場区分ごとに設定されました。
各市場での新規上場料は以下の通りです(詳細は日本取引所グループの公式サイトを参照):

登録免許税
登録免許税は、会社や不動産の登記・登録時に課される税金です。特に株式会社の設立登記や資本の増資等に際して課税されるこの税金は、資本組入額に対して0.7%の税率(資本組入額×1000分の7)で計算されます。IPO時には公募による増資を行うことが多いため、資本組入額に応じて登録免許税が発生します。
株式の公募または売出に必要な費用
株式の公募または売出にかかる費用は、公募株式数または売出株式数に基づき計算されます。具体的には、公募の場合は公募株式数×公募価格×1万分の9、売出の場合は売出株式数×売出価格×1万分の1となり、企業が株式を市場に提供する際に生じる実際のコストを反映しています。この費用は、証券取引所への申請に必要な手数料として支払われます。
証券会社に対する引受手数料
IPOにおける証券会社の引受手数料は、公募または私募を通じて株式を市場に売り出す際に証券会社が受け取る報酬です。この手数料は通常、公募価格や発行価格の数%で設定され、株式の引受におけるリスクを証券会社が負う対価として支払われます。スプレッド方式を採用する証券会社では、公募価格と発行価格の差額が手数料となり、会社(発行体)のPL上、引受手数料は計上されません。
なお、上記以外にも、公開引受部に対する上場成功報酬が発生することもあります。
上場後に必要な費用

上場後は、年間上場料、開示書類の作成費用、株式事務代行機関への委託費用や会計監査費用などが発生します。上場を維持するために不可欠な経費です。
年間上場料
上場会社は市場区分ごとに定められた年間上場料を支払う必要があります。以下の表は市場区分ごとの年間上場料を示しています。

開示書類の作成費用
上場会社は、証券取引所の要請、会社法や金融商品取引法に基づき、定期的に様々な開示書類を作成し公表する義務があります。対象は有価証券報告書、半期報告書、決算短信などです。開示書類の作成には、通常年間200万円から500万円の費用がかかります。
株式事務代行機関への委託費用
株式事務代行機関には、株主名簿の管理や株主総会の運営サポートなど、株式に関わる広範な事務処理を委託します。これには年間400万円前後の費用が見込まれ、大規模な企業や株主数が多い企業ではこの費用がさらに増加する場合があります。
会計監査費用
会計監査は、上場会社にとって法律により義務付けられている重要なプロセスです。監査法人による監査を通じて、財務報告の信頼性が保証されます。企業の規模や取引の複雑性に応じて費用は変動します。
発生する費用をふまえて事業計画を作ろう

企業が上場を目指す際には資金の準備が必要です。実際に上場に至るまでには、様々なステージで発生する費用を考慮した詳細な事業計画の作成を必要とします。上場準備、上場時、そして上場後に発生する費用を正確に理解し、これを事業計画に組み込むことは予期せぬ資金繰りの問題を避けるために不可欠です。
上場に際しては、数千万から数億円規模の資金が必要となります。
支払う費用には、監査法人への支払い、証券会社や証券印刷会社への料金、株式事務代行機関やコンサルティング会社への支払いが含まれます。これらの費用は、上場準備段階のみならず、一部は上場後も継続して発生するため注意が必要です。例えば、年間上場料、開示書類の作成費用、監査費用などが定期的に必要となります。これらの費用を事前に計画に組み込むことで、企業は必要な資金を効果的に管理し、上場後の業績予測を現実的なものにすることができるでしょう。
また、事業計画を作成する過程でコンサルティング会社の専門知識を活用するのがおすすめです。専門家の助けを借りることで、上場に向けた準備の具体性が増し、実現すべき業績目標が具体的にイメージしやすくなります。
コンサルティング会社は、IPOに関する複雑な要件や手続をクリアするために必要な専門知識を提供し、法的・財務的なリスクの低減をサポートすることができます。これにより、企業は上場後のリスクを低減し、安定した経営を実現しやすくなるでしょう。計画を具体化することは、上場を成功させるためだけでなく、上場後の事業拡大や持続可能な成長を図るうえでも重要です。事業計画に基づいて戦略的に行動を起こすことで、市場の変動や経済状況の変化に強い企業体を作り上げることができます。
まとめ

IPOを成功させ、その後も企業を健全に成長させていくためには、上場準備にかかる費用を正確に理解し、適切に計画することが必要です。上場準備から上場時、そして上場後にかかる費用を把握し、それぞれの段階で必要となる費用を戦略的に管理することが不可欠です。
IPOに関する費用を適切に予算化し、事業計画に反映させることで、資金繰りの問題を未然に防ぎ、将来的な資本市場での信頼性を確立できるでしょう。IPOのプロセスは複雑でコストも多岐にわたりますが、上場を機会として組織全体の効率化と強化を図り、持続可能な成長を目指しましょう。
Co-WARCについて
Co-WARCでは、内部統制構築、J-SOXの立ち上げ支援を含め、コーポレート課題全般の支援を行っています。
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