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後発事象とは?分類・判断基準・監査対応を詳しく解説
企業の決算書は、その年度内で起こった出来事にもとづいて作成されます。しかし、決算日以降に財務諸表の内容に大きな影響を与える「後発事象」が発生することもあります。こうした場合、どのように対応すべきなのでしょうか。
本記事では、後発事象の定義や分類、判断基準をはじめ、実務での取り扱い方や監査対応まで詳しく解説します。財務報告における信頼性向上のため、最後まで読んでみてください。


後発事象とは

企業の決算日後に発生する「後発事象」は、財務報告や監査において慎重な取り扱いが求められる重要事項です。ここでは、後発事象の定義や開示が求められる背景、および実務での重要性について詳しく解説します。
後発事象の定義と修正もしくは開示が必要な背景
後発事象とは、決算日後、財務諸表の発行日までの期間に発生した会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす会計事象のことです。後発事象が発生した場合、企業は、財務諸表の修正もしくは利害関係者に対する開示をしなければならない可能性があります。
開示とは、企業が作成した財務諸表を投資家や債権者など、その企業のステークホルダーに対して公開し、情報提供を行うことです。後発事象の開示は、これらのステークホルダーが企業の財務状況を正確に把握し、投資判断や信用評価を行う上で欠かせません。
後発事象に関する開示基準は、1983年の「後発事象に関する監査上の取扱い」の公表以降、数度にわたって改訂されてきました。現在では、連結財務諸表を中心とした情報開示が求められるようになり、企業の経営活動やその動向を迅速かつ正確に伝える必要性がさらに高まっています。
実務における重要性
後発事象は、企業の財務報告の信頼性に大きな影響を与えるため、実務において重要です。決算日後に発生した事象が財務諸表に与える影響を正しく判断し、適切に対応することは、企業の経営状況や財政状態の透明性を保つために欠かせません。特に重要な後発事象が見過ごされると、利害関係者に対して実態と異なる情報を提供するリスクが高まります。
こうした点から、後発事象の適切な識別、評価、開示はリスク管理やコンプライアンスの観点からも重要視されるのです。
後発事象の分類
後発事象は、財務諸表を修正すべき後発事象(修正後発事象)と財務諸表に注記すべき後発事象(開示後発事象)の2つに分類されます。どちらに該当するかで、後発事象が発生した際の処理方法が変わるため、それぞれに応じた対応を理解しておかなければなりません。

ここからは、修正後発事象と開示後発事象について、具体例とともに解説します。
修正後発事象(財務諸表を修正すべき後発事象)
修正後発事象とは、決算日後に発生した会計事象であるものの、その実質的な原因が決算日時点ですでに存在しており、会計上の判断や見積もりを行う上で追加の客観的証拠として考慮すべき事象を指します。このような事象は当該決算期の財務諸表に影響を及ぼすため、重要な修正後発事象が発生した場合には、財務諸表の修正が必要となりますです。
なお、注記が必要となるのは「重要な後発事象」に限られ、全ての事象が対象となるわけではありません。重要な後発事象は、金額的重要性(事象が財務諸表に与える影響の大きさ)と質的重要性(事象の性質や内容が財務諸表利用者の判断に与える影響)から判断されます。
これらの修正後発事象を適切に処理しないまま財務諸表を作成すると、企業の財政状態や経営成績が実態と異なる情報が利害関係者に伝わり、利害関係者の判断を誤らせる可能性があるため注意が必要です。
修正後発事象の例
修正後発事象には、決算日以前の出来事が決算日後に確定したケースが該当します。例えば、決算日以前から係争中であった訴訟が決算日後に解決し、会社に対する損害賠償が確定した場合、これを財務諸表に反映する必要があり、貸借対照表において債務の計上が必要になります。
他にも次のようなケースが修正後発事象に該当します。
- 決算日後に在庫商品の大幅な価値下落が発覚し、その原因が決算日前に存在していた場合
- 決算日時点で保有していた資産の価値が、決算日後に判明した決算日時点の状況を反映していなかったことが明らかになった場合
開示後発事象(財務諸表に注記すべき後発事象)
開示後発事象とは、決算日後に発生し、当該年度の財務諸表には影響を及ぼさないものの、翌事業年度以降の財務状態に影響を及ぼす可能性がある会計事象のことです。このような開示後発事象は、将来の財務状況や経営成績に関する重要な情報となるため、財務諸表に注記を加えることで利害関係者に共有する必要があります。
なお、前述の修正後発事象の場合と同様に、注記が必要となるのは「重要な後発事象」に限られます。
開示後発事象の例
開示後発事象について、注記の対象となる事象には以下のようなものが挙げられます。
| 事象 | 具体例 |
|---|---|
| 会社が営む事業に関する事象 | ・重要な事業の譲受 |
| 資本の増減等に関する事象 | ・重要な新株の発行 |
| 資金の調達・返済等に関する事象 | ・多額な社債の発行 |
| 子会社等に関する事象 | ・子会社等の援助のための多額な負担の発生(※) |
| 災害等による損失に関する事象 | ・火災、震災、出水等による重大な損害の発生 |
参照:監査基準報告書560実務指針第1号「後発事象に関する監査上の取扱い」
なお、ここで挙げた例は、必ずしも全て開示が求められるわけではありません。開示の要否は、企業の財政状態や経営成績、キャッシュ・フローに与える影響の「重要性や性質に応じて判断する必要があります。また、※印が付された項目でその事象による損失が決算日以前に起因する場合は、修正後発事象として扱われるケースが多いことにも注意が必要です。
重要な後発事象の開示内容の例示

ここでは重要な後発事象がどのように注記されるかを、開示後発事象の具体例を挙げて見ていきましょう。
| 事象 | 発生時期 | 注記事項 |
|---|---|---|
| 重要な事業の譲受 | 合意成立または事実の公表のとき | その旨と目的 |
| 重要な新株の発行 | 取締役会等の決議があったとき | その旨 |
| 多額な社債の発行 | 取締役会等の決議があったとき | その旨 |
| 子会社等援助のための多額な負担の発生 | 取締役会等の決議があったとき | その旨および理由 |
| 火災、震災、出水等による重大な損害の発生 | 火災、震災、出水等による損害の発生を認知したとき | その旨 |
参照:監査基準報告書560実務指針第1号「後発事象に関する監査上の取扱い」
重要な後発事象に伴う金額については、信頼できるデータに基づき客観的に見積もる必要があり、万が一、見積もりが難しい場合はその理由を開示しなければなりません。
損害額も同様で、信頼性の高い資料を活用して客観的に見積もる必要があり、客観的な見積もりが困難な場合には、その旨と理由、および現時点で把握できる被害の状況等の開示が求められます。
修正後発事象か開示後発事象かの判断

決算日後に発生した事象が修正後発事象に該当するか、あるいは開示後発事象とされるべきか、その事象の原因が決算日現在に存在しているかどうかで判断されます。
ここからは「事業所の閉鎖を決定した場合」と「取引先が破産・倒産した場合」の2つの事例を用いて、後発事象がどちらに該当するかを検討します。
事業所の閉鎖を決定した場合
決算日後の取締役会で事業所の閉鎖を決定したケースを検討します。このケースでは、事業所の閉鎖を決定した実質的な原因により、修正後発事象か開示後発事象かが判断基準です。
収益性の低下が原因で閉鎖が決定された場合、決算日後に突然収益性が悪化したケースを除き、決算日時点において既に業績悪化は顕在化しており閉鎖が検討されていたと考えられます。収益悪化が進み、その結果として稼働率が低下し、最終的に取締役会で閉鎖決定に至ったのであれば、閉鎖の実質的な原因は決算日現在で既に存在していたことになります。
この場合、閉鎖の決定は修正後発事象と考えられるため、決算日現在の状況をもとに会計上の判断や見積もりの見直しが必要になります。閉鎖が決定した事業所の設備などについて、収益性の低下により既に一部減損処理済みと考えられますが、閉鎖に伴う追加計上の要否をを検討し、重要性がある場合は財務諸表を修正することになります。
一方、決算日後に自然災害が発生し、それを受けて事業所の閉鎖が決まったケースでは、閉鎖の原因が決算日時点には存在しなかったと判断されます。このような場合には、開示後発事象に該当しますので、重要性によって注記による開示を検討することになります。
取引先が破産・倒産した場合
決算日後に取引先が破産や倒産したことで売掛金が回収できなくなったケースを検討します。
取引先の財務状況が徐々に悪化しており、最終的に決算日後に破産や倒産に至った場合は、破産・倒産の実質的な原因が決算日以前に存在していたと判断される可能性が高くなります。この場合、取引先の破産・倒産は修正後発事象に該当するため、売掛金の回収不能額に重要性があれば、損失として財務諸表に計上しなければなりません。
一方、決算日後に発生した大規模な災害が原因で取引先が破産や倒産した場合、決算日現在においてその原因が存在していたとはいえません。このような場合は開示後発事象として取り扱い、重要性次第では注記による開示を検討することになります。
まとめ

本記事では、後発事象の定義や分類、判断基準をはじめ、実務での取り扱い方や監査対応までを詳しく解説しました。
後発事象は、企業の財務状況やキャッシュ・フローに大きな影響をもたらす重要な出来事です。投資家や株主は後発事象を含めた財務情報をもとに投資判断を行うため、適切な修正や注記が欠かせません。後発事象の適切な開示は企業の信頼性向上にもつながりますので、正確な情報提供を心がけましょう。
なお、後発事象を含む決算開示の業務に関しては、コーポレート業務代行の決算開示アウトソーシングを活用するのも一つの方法です。
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