メディア MEDIA
上場準備の直前々期(N-2期)の特徴とは?難しさや失敗例も解説
株式上場を成功させるためには、プロジェクト全体のタスクとスケジュールをしっかり把握しておくことが重要です。上場は管理部門に大きな負担をかけるプロジェクトとなるため、タスクをポイントごとに確認し、リソースの配分を意識して進める必要があります。ここでは、上場に向けた準備をスケジュールに沿って説明します。


上場スケジュールにおけるN-2期

上場準備では上場申請を行う期間のことを「申請期(N期)」と呼びます。
そしてN期の2期前の期は「直前々期(N-2期)」と呼ばれ、監査法人が行ったショートレビューの結果や証券会社からの課題報告書を基に、改善点の特定、コーポレートガバナンス、コンプライアンス体制などの内部管理体制の整備、関連会社・関連当事者との取引の整理を進めます。
また、N-2期の期首から、上場に向けた会計監査が開始されます。主幹事証券会社との契約や内部統制報告制度(J-SOX)の準備開始もこの時期が一般的です。
IPOの流れについては、次の記事を参考にしてください。
【約3年】IPOの流れと各期の対応事項一覧!登場人物と費用も解説
N-2期は関門が多い?

N-2期では、本格的に会計監査がスタートします。ショートレビューの実施や内部管理体制の整備に取り組み、上場会社にふさわしい体制の整備を進める時期です。N-2期は多くの関門がある時期と言えるでしょう。
N-2期にすべきこと
ここではN-2期に実施すべき事項を紹介します。
利益管理や業務管理の体制構築を行う
N-2期では、事業計画の策定、予算と実績の管理(予実管理)を実施できる体制を整えます。事業計画とは、企業の目的を実現するための詳細なアクションプランを意味します。事業計画には、3~5年の中長期的な目標や戦略・戦術が明示されます。
企業の実力に見合わない過大な計画は、実現不可能と判断されることがあります。逆に目標が低すぎると、投資家の関心を引けない可能性があります。何よりも計画の合理性と経営理念との整合性が保たれているかが重要です。
この事業計画は予実管理の基礎となるため、審査前に計画の精度を高めることが必要です。予実管理は、一般的に月次で予算と実績を比較しながら行います。予実管理には、比較の結果に関する原因の分析も含まれます。
また、N-2期では、反社チェック、与信チェック、労務管理、情報セキュリティの強化などコンプライアンスや法令遵守に対応した業務管理体制の構築が求められます。
会計処理を整理する
上場を目指す場合、財務会計基準に基づいた会計処理の体制を整備する必要があります。そのため、税務基準に基づいた会計処理を行っている場合は、会計処理を変更する必要があります。
N-2期の会計数値は、監査法人による監査の対象となります。遅くともN-2期中には適切に会計処理が行える体制の整備に着手しましょう。
内部統制制度(J-SOX)への対応
内部統制制度(J-SOX)とは、財務報告の信頼性を高めることを目的とする制度です。上場会社は、会計不正を防ぐために、毎事業年度ごとに内部統制の評価を実施し、その結果を内部統制報告書として、有価証券報告書に添付して内閣総理大臣に提出する必要があります。このため、J-SOXに準拠した体制を構築することが求められます。
関連当事者の整理
上場を目指す企業にとっては、利益相反の問題に抵触しないような組織構造の改善が求められます。利益相反が発生しないよう、企業内部の組織構造を見直すことで、透明性と公正性を確保することが重要です。
この改善には関連当事者との取引を適切かつ公正に処理することが含まれます。関連当事者との取引がある場合、原則としてその取引を解消する方向で検討する必要がありますが、解消が難しい場合は、当該取引の価格やその他の条件が客観的に見ても問題ないことを確認したうえで、開示できる体制を整えます。
N-2期の固有の難しさ
N-2期に実施すべき事項を紹介したところで、ここからはN-2期の固有の難しさを紹介します。どのような部分につまずくケースが多いのか、整理してみてください。
管理体制を整えなければならない
内部統制の不十分さは、上場が失敗するリスクを高めることがあります。内部統制とは、経営者が会社の業務を効果的かつ効率的に管理し、健全な運営を保つための体制を指します。そのため、内部統制の不備が起きないよう、内部統制を構築していく必要があります。
なお、内部統制の不備は大きく分けて、以下の2つです。
- 整備の不備
- 運用の不備
整備の不備は、必要なチェック体制が未整備または有効性が低いものであるために生じ、業務フローの再構築や承認フローの追加など、統制の強化活動が必要となります。運用の不備は、体制が整っているにも関わらず実際には整備した通りに実行されていない場合に発生します。運用を徹底させるための社内の周知・教育や、運用状況のモニタリングの仕組み構築が必要となります。
これらの内部統制の問題は、内部統制報告制度(J-SOX)に基づいて自社の内部統制が評価される際の重要なポイントです。
会計処理を整理しなければならない
上場に向けて、財務会計の基準に沿って、会計処理を整理する必要があります。しかし、財務会計の基準は非常に複雑で、専門的な知識が不可欠です。売上や利益の数字に影響を及ぼすので、時には監査法人と長期にわたる交渉や調整が行われることもあります。
特に、収益認識基準や税効果会計などの会計論点の整理は全ての上場準備企業で検討が求められるので、専門性のあるメンバーを採用するか、専門家とともに会計処理を整備しなければなりません。上場後も、新しい会計基準が適用される都度、論点の抽出から会計処理に至るまでの整理をすることになるため、継続的に会計処理を検討する能力と専門性が重要になります。
新しい人材やメンバーが増える
上場準備においては、上場準備自体にリソースが割かれるため、上場準備に関連するメンバーの採用が不可欠です。また、上場準備をする成長企業は、毎月のように新規メンバーの採用を実施しているため、上場準備に関係する以外のメンバーも常に増え続けます。
しかし、上場準備中は、業務のプロセスやルールが常に変わっていくので、新メンバーへの浸透はもちろん、既存メンバーもそれらの変更をキャッチアップすることが大変になります。
したがって、企業内教育を通じて従業員が業務プロセスやルールの変更を十分に共有し、理解する必要があります。知識などの徹底が不足すると、上場準備における内部監査や会計監査での不備につながる可能性があります。
N-2期の失敗例
N-2期に対応すべき事項に対応できなかったことを理由として、上場を断念したり、延期したりする場合があります。
N-2期における失敗例には次のようなものがあります。
- 月次決算の早期化がうまく進まず、月次単位での予算と実績の比較・分析体制が整わない
- 数多くのIPOに向けての課題について優先度をつけることができず、どの課題も消化状況が中途半端なまま。何が最大の障害になるか特定できない
- IPOに向け、管理部門メンバーの業務負荷が増大し退職者がでてしまう
- IPO準備を急ぐため急激に統制を強めた結果、管理部門メンバー以外の反発が強くなり、事業部門と管理部門の関係性が悪化する
これらの失敗を回避するためには、N-2期も含めた上場準備のプロセスを正確に理解したうえで、早い段階から上場準備を開始する必要があります。そのために、専門家のサポートを受ける選択肢もあります。
IPOコンサルティング会社に依頼するメリット・デメリット

上場には専門知識と人的リソースが必要で、そのような専門性やリソースの不足に陥ることも少なくないです。ではIPOコンサルティング会社に依頼するメリットはどのようなものがあるのでしょうか。また、依頼することによるデメリットもあります。この章で詳しく説明します。
メリット:専門家目線からのサポートをしてくれる
IPOコンサルティング会社に依頼するメリットは、上場プロセスに関する専門知識と豊富な経験を持つプロの力を借りて、適切な手続を円滑に進められる点です。
上場手続を実行する際には、さまざまな分野における専門知識が必要です。具体的には、上場に必要な多岐にわたる書類の作成、企業の内部統制の確立、取引所や証券会社による審査対応など、専門性の高い業務が存在します。そのため、他社事例や専門性の高いIPOコンサルティング会社に依頼することで、上場準備における課題の効果的な解決策の実行につながるでしょう。
メリット:IPO準備のスピードアップが可能
上場手続を実施する際に、外部から新しい人材を採用したり、社内で担当者を選び育成することは、期限が限られているIPO準備においては時間的に難しいことがあります。しかし、スピードが求められるIPO準備においては、専門知識と経験を持つプロの力を借りることで、IPO準備タスクを期限内に完遂できる可能性が高まります。
しかし、専門知識を持つプロであっても、会社特有の状況や必要なデータ提供が十分でなければ、必要な情報収集等に時間がかかり十分なスピードが出ないことがあります。
IPOコンサルティング会社に一部の業務を任せるとしても、会社側にカウンターパートとなる人材を置き、タイムリーにコミュニケーションできる体制を整えることが必要です。
デメリット:まとまったコストが発生する
IPOコンサルティング会社への依頼は、会計士などの専門知識を持つ人材のアサインが必要なことが多く、時間あたりの稼働金額は高額になることが多いです。
依頼内容が多い場合はまとまったコストが発生する可能性もあり、事前に社内でそのコストを掛けてもよいのか、依頼する業務内容はどこまでかなどの整理を行うほうが良いでしょう。
デメリット:依頼した業務の知識・ノウハウが社内に残すのには工夫が必要
IPOコンサルティング会社に依頼した業務のうち、J-SOXの運用や開示書類の作成等、上場後も継続的に発生する業務もあります。
これらは最終的には内製化を目指すことが多いですが、IPOコンサルティング会社に依頼する場合、これらの専門的な業務の知識・ノウハウは社内に残りづらくなります。
業務マニュアルをタイムリーに作成するように依頼する、進捗管理・レビューを会社側も行い、業務内容を把握する等、IPOコンサルティング会社に丸投げではなく、できる限り会社側も業務ノウハウが貯まるようにコミュニケーションを取ることが重要です。
まとめ

上場が失敗する原因はさまざまです。上場までのプロセスごとに特有の問題があります。
失敗を成功に変えるためには、社内の改善事項への取り組みと、外部に向けた事業戦略の構築が重要です。その中でも上場会社として適切な体制構築に取り組むN-2期は、N-1期に向けた適切な準備をする時期であると言えます。
N-2期をスケジュール通りに乗り越えるためには、IPOコンサルティング会社にサポートを依頼するなどの手段を用いて適切に乗り越えましょう。
Co-WARCについて
Co-WARCでは、内部統制構築、J-SOXの立ち上げ支援を含め、コーポレート課題全般の支援を行っています。
何からすれば良いかわからないから相談したい、具体的な支援内容を知りたいなど、どんなお悩みでもお気軽にご相談ください。
コーポレート課題を解決するプロが最適な解決策をご提案します。



関連記事
-
2025.03.04東証でのIPOに必要なものとは?IPOの基礎知識と手続を解説 -
2025.02.27【一覧】上場準備にかかる費用とは?準備・上場時・上場後に分けて解説 -
2025.02.13上場準備や上場後の失敗を防ぐためには?失敗例付きで解説 -
2025.02.07【IPO準備企業向け】ストックオプションの仕組みやメリット・デメリットを解説 -
2025.01.30IPOにおける監査法人の役割を解説:選び方から契約のタイミングも! -
2025.01.23IPOにおける主幹事証券会社の役割とは?探し方・選び方を解説 -
2025.01.16【約3年】IPOの流れと各期の対応事項一覧!登場人物と費用も解説 -
2024.11.20IPOのメリット&デメリット!IPOを目指す最初のステップも解説 -
2024.11.13IPOとは?証券取引所の種類・スケジュールの解説
