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【IPO準備企業向け】ストックオプションの仕組みやメリット・デメリットを解説
IPOを目指す企業にとって、従業員のモチベーション向上や優秀な人材の確保は欠かせません。そうした中、多くの企業が導入しているのが「ストックオプション」制度です。
本記事では、ストックオプションの基本的な仕組み、企業が導入する際のメリット・デメリット、税制適格ストックオプションの詳細について解説します。また、従業員持株会との違いについても触れているので、ぜひ参考にしてください。


ストックオプション制度とは?

ストックオプション制度とは、企業が従業員に対して、将来一定の条件下で自社の株式を購入できる権利を与える制度です。この権利は「新株予約権」とも呼ばれます。もともとアメリカで誕生し、日本では1997年の商法改正により導入されました。
ストックオプションを付与された従業員は、会社がIPOを果たした際にその権利を行使して株式を購入し、市場で売却することで利益を得ることができます。株価が上がるほど利益も大きくなるため、成長が期待される企業にとって有効な制度といえます。
IPOを目指す企業の多くがこの制度を導入しており、2023年のデータによると、約9割のIPO企業がストックオプションを採用しています。このように、ストックオプションはIPO準備企業における主要なインセンティブ制度として定着しています。
ストックオプションの仕組み
企業が従業員に対して株式オプションを提供し、従業員が将来的に企業の株式を一定の条件で購入する権利を得られる仕組みがストックオプションです。
例えば、会社から「権限付与から2年後に、1株1,000円で株式を購入できる」というストックオプションが付与されたとします。仮に2年後、株価が5,000円に上昇していた場合、従業員は1,000円で購入する権利を行使することで、1株あたり4,000円の利益を得ることができます。
ストックオプションの権利行使には数量や期間に関する条件が設定されており、企業の株価が上昇するほど従業員の利益も大きくなります。なお、権利を行使しない限り損失が発生することはないため、リスクが少ない制度といえます。
ストックオプションと従業員持株会の違いは?

ストックオプション制度と同様に、従業員へのインセンティブとして広く利用されているのが「従業員持株会制度」です。従業員持株会とは、従業員が自社の株式を購入するために設立される組織であり、毎月の給与から天引きで資金を拠出し、長期的な財産形成を目指します。福利厚生の一環として設けられることが多く、制度が整っていれば誰でも利用可能です。
一方、ストックオプションは、企業が従業員に対して無償で付与することが多い「将来的に株式を購入できる権利」です。権利行使することで、従業員はあらかじめ設定された価格で株式を購入できます。一方、従業員持株会では、社員が自ら資金を拠出して株式を購入するため、購入時点から株主としての権利が発生します。
また、IPOが中止された場合、ストックオプションは無効にできますが、持株会の場合、IPOが中止されても株主であることに変わりはありません。どちらの制度を採用するかは、従業員にどのような形で会社に関与してもらいたいかという経営者の考え方によります。
ストックオプションを導入するメリット

ストックオプションを導入することで、企業には以下のようなメリットがあります。
- 優秀な人材の確保・定着促進
- 従業員のモチベーション向上
- 従業員へのリスクが少ない
優秀な人材の確保・定着促進
ストックオプションは、インセンティブとして優秀な人材を引きつける効果があります。特に、十分な給与を提供する余裕がないベンチャー企業にとって、ストックオプションは有能な人材を確保する手段として有効です。
また、ストックオプションは一定の期間が経過しないと行使できない仕組みとなっているため、その期間内に退職した従業員は報酬を受け取ることができません。これにより、優秀な人材の流出を防ぐ効果も期待できます。
従業員のモチベーション向上
ストックオプションは、従業員のモチベーション向上にも寄与します。事前に決められた価格で株式を購入できる権利が付与されるため、企業の業績が向上し株価が上昇すれば、従業員は大きな利益を得ることができます。
また、企業の業績向上が自身の利益に直結するため、従業員は業務に対してより積極的に取り組むようになります。この仕組みにより、会社全体の生産性向上にも繋がるでしょう。
従業員へのリスクが少ない
ストックオプションを受け取った従業員や取締役は、基本的に金銭的な損失を被ることはありません。ストックオプションは株式を購入する「権利」であり、必ずしも行使する義務はないため、株価が不利な状況であれば行使しない選択も可能です。
例えば、行使価格が1,000円で現在の株価が2,000円の場合、行使すれば1株あたり1,000円の利益を得られます。逆に、株価が1,000円の権利行使価格に対して500円に下がった場合、権利行使しなければ損失は発生しません。
このように、企業の業績が低迷し株価が下落した場合でも、従業員は損失を回避できるため、リスクを負うことなく安心して権利を保有できるのです。
IPOのメリットは、こちらの記事で詳しく解説しています。
IPOのメリット&デメリット!IPOを目指す最初のステップも解説
ストックオプションを導入するデメリット

ストックオプションを導入することで、企業側には以下の3つのデメリットが考えられます。
- 株価下落による従業員のモチベーション低下
- 社内で不公平感が生まれる可能性
- 権利行使後の従業員の離職リスク
株価下落による従業員のモチベーション低下
ストックオプションは、株価が上昇することで利益を得られる仕組みです。しかし、株価が下落すると利益を得られず、従業員のモチベーション低下に繋がる可能性があります。株価は市場の影響を受けて変動するため、必ずしも上昇するとは限りません。株価が下がることでストックオプションの価値が減少し、優秀な人材が会社を離れるリスクが懸念されます。
また、ストックオプションの利益を退職後の生活資金として計画している従業員にとって、株価の下落は大きな打撃となります。こうした状況が続くと、従業員の将来に対する不安を大きくさせてしまう可能性もあるでしょう。
社内で不公平感が生まれる可能性
ストックオプションを一部の従業員や役員にのみ付与すると、付与されなかった従業員の間で不満が生じる可能性があります。その結果、社内の雰囲気が悪化し、従業員間のコミュニケーションが円滑に進まなくなることで、業務に支障をきたすことも考えられます。
こうした問題を防ぐためには、ストックオプションの付与基準を明確にし、公平で透明性のある制度設計を行うことが重要です。
権利行使後の従業員の離職リスク
ストックオプションの権利行使後に、従業員が退職するリスクもあります。
ストックオプションに魅力を感じていた従業員が、権利行使後にその会社で働き続けるメリットがないと考えてしまうケースです。
そのため、権利行使後も従業員のモチベーションを維持し、他社への流出を防ぐためのフォローを行う必要があります。
権利行使後の離職リスク防止には「ベスティング条項」を設定しよう
近年、ストックオプションを付与する企業が増える一方で、権利行使後にすぐ退職してしまうケースが増えています。こうした問題に対応するため、多くの企業が導入しているのが「ベスティング条項」です。
ベスティング条項とは、従業員がストックオプションを行使するまでに、一定期間会社に在籍することを条件とする仕組みです。例えば、「5年間勤務した場合に、付与されたストックオプションの全権利を行使できる」といったように、権利行使までの期間を設定します。
ただし、期間が長すぎると従業員のモチベーション低下を招く可能性があるため、適切な期間を設定することが重要です。
ベスティング条項を活用することで、従業員の長期的な貢献を促し、優秀な人材の定着に繋げることができます。人材の安定確保を目指す企業は、ベスティング条項の導入を検討するとよいでしょう。
税制適格ストックオプションについて
ストックオプションには、有償と無償のものがありますが、ここでは税制優遇を得られる「税制適格ストックオプション」について解説します。

ストックオプションは、権利を付与される従業員の資金負担の有無により「無償ストックオプション」と「有償ストックオプション」の2種類に分類されます。無償ストックオプションには「税制適格ストックオプション」と「税制非適格ストックオプション」があり、特に税制上のメリットが大きいのが「税制適格ストックオプション」です。
租税特別措置法に定める要件を満たしたストックオプションが、税制適格ストックオプションとされます。通常のストックオプションでは、権利行使時と株式売却時の2回にわたって課税されますが、税制適格ストックオプションでは課税が株式売却時のみとなり、権利行使時の課税は発生しません。これにより、権利行使時の税金を繰り延べることができ、実際に利益が発生した時点で課税されるため、従業員の資金負担を軽減できます。
ただし、税制適格ストックオプションとして認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 付与対象者の範囲:会社及びその子会社の取締役、執行役及び使用人、一定の要件を満たす社外高度人材(大口株主及びその特別関係者を除く)
- 権利行使期間: 付与決議日後2年を経過した日から付与決議日後10年を経過する日まで(ただし、設立から5年未満の非上場会社の場合、付与決議日後2年を経過した日から付与決議日後15年を経過する日まで)
- 権利行使価額:権利行使価額が契約締結時の株式の価額相当額以上
- 権利行使限度額:権利行使価額の年間の合計額が1,200万円を超えない(ただし、設立の日以後の期間が5年未満の株式会社が付与するストックオプションの場合は年間の合計額が2,400万円を超えないものまで認められる。また、設立の日以後の期間が5年以上20年未満の株式会社で、非上場会社又は上場の日以後の期間が5年未満の上場会社が付与するストックオプションの場合は年間の合計額が3,400万円を超えないものまで認められる)
- 譲渡制限:譲渡禁止
- 発行形態:無償であること
- 株式の交付:会社法238条1項に定める事項に反しないこと
- 株式の管理:行使により取得する株式について金融商品取引業者等の振替口座簿に記載もしくは記録を受け、またはその営業所等に保管の委託もしくは管理等信託がされること(譲渡制限株式の場合、発行会社による管理も認められる)
これらの条件をすべて満たすことで、税制上の優遇措置を受けることができます。
ストックオプションの発行プロセス

ストックオプションを発行する際のプロセスは、以下の通りです。
- 株主総会での発行決議
- 取締役会での詳細決定
- 税制適格要件を定めた割当契約の締結
ストックオプションを発行するには、まず会社の最高意思決定機関である株主総会で発行を承認(=発行決議)してもらう必要があります。この決議では、発行するストックオプションの数や権利行使期間など、大まかな枠組みを決定します。会社法に基づき、決議には議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
承認後、株主総会で決定した内容を具体化し、「誰に」「いつ」「どのくらい」のストックオプションを付与するかを取締役会で決定します。この際、従業員のモチベーションを高められるような制度設計を行うことが重要です。
取締役会での決定後、従業員との間で「割当契約」を締結します。契約書には、ストックオプションの詳細な内容を記載し、両者の権利義務を明確に定めます。
IPO準備企業がストックオプション活用時に注意したいポイント

ストックオプションを発行する際は、株数ではなく持分比率(全発行済株式に対するストックオプション付与対象者の株数の割合)を考慮することが重要です。
一般的に、ストックオプションの持分比率は10%前後に設定されます。持分比率が高くなりすぎると、多くのストックオプションが行使された際に既存株主の持つ株式の価値が希薄化するリスクがあるためです。
そのため、ストックオプションを「いつ」「誰に」「どのくらい」付与するかを慎重に検討する必要があります。
IPOの基礎的な情報は、こちらの記事にまとめています。
まとめ

本記事では、ストックオプションの基本的な仕組みや、企業が導入する際のメリット・デメリットについて解説しました。
ストックオプションは、企業の成長や株価の上昇に伴い、権利を持つ従業員にとって大きな魅力となる制度です。適切に設計されたストックオプションは、従業員のモチベーション向上につながり、最終的には企業価値の向上にも貢献します。
導入にあたっては、適切な準備と計画が不可欠です。ストックオプションを効果的に活用し、企業と従業員双方にとって最大限のメリットをもたらせるよう努めましょう。
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