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内部監査とは?目的やプロセス、注意点、課題を詳しく解説
企業の規模が大きくなると、経営者が日常業務の不正や非効率を自らチェックすることは次第に難しくなります。こうした企業の成長過程において重要になるのが「内部監査」です。
内部監査は、企業内の独立した監査組織が業務の実態を調査・評価し、報告や助言を行うものです。しかし、どのような流れで進めるのか、具体的な手順を理解できていない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、内部監査の目的や具体的なプロセス、実施時の注意点について分かりやすく解説します。内部監査の基本を押さえ、実務に活かしていきましょう。


内部監査の目的

内部監査の流れを正しく理解するために、まずはその目的を押さえておきましょう。内部監査の主な目的として、以下の3つが挙げられます。
- リスク低減と社内不正の防止
- 業務改善・効率化の促進
- 経営目標の達成
リスク低減と社内不正の防止
内部監査の目的の一つは、企業が抱えるリスクを把握し、適切な対策を講じることで、業務の安定性を確保することです。
事業活動に伴うリスクを完全に排除することは困難です。しかし、企業が持続的に成長・存続していくためには、リスクを適切に管理し、万が一問題が発生した際にも被害を最小限に抑えることが求められます。
内部監査では、事業活動に伴うリスクがどの領域に潜んでいるのかを洗い出し、適切な管理体制が整備されているかを第三者の視点で評価します。監査の範囲や重点項目は企業ごとに異なります。しかし近年ではリスクマネジメントの重要性が増しており、潜在的なリスクの特定や緊急時の対応方針が整備されているかの確認が行われるケースが増えています。
さらに、定期的な監査実施は「常に見られている」という意識を従業員に与え、不正行為の抑止力となります。この仕組みが機能していれば、従業員による不正行為そのものを防ぐ効果も期待できるでしょう。
業務改善・効率化の促進
内部監査の目的は、問題点を指摘することだけではありません。業務のムダや非効率なプロセスを見直し、企業全体のパフォーマンスを向上させることも大きな役割の一つです。
監査では、社内の業務を総合的に評価します。ITツールの導入や組織の拡大に伴い発生しやすい「作業の重複」「無駄な手続」といった非効率な業務の特定が可能です。例えば、複数の部門で似たような業務を行っている、承認フローが複雑になりすぎている、といった問題は監査を通じて見えてくることも少なくありません。
こうした非効率な点を特定し、各部門に改善策を提案したり、経営層に報告して業務の抜本的な見直しを行ったりすることで、よりスムーズな業務運営を実現できます。
また、ビジネス環境は常に変化しており、一度決めた業務フローが長期にわたり最適とは限りません。そこで、内部監査を通じて定期的に業務の見直しを行うことで、外部環境の変化に対応し、企業の競争力を維持・向上させることが可能になります。
経営目標の達成
企業が掲げる経営目標を達成するためには、業務が適切に運営され、計画通りに進んでいるかをチェックすることが欠かせません。内部監査は「経営目標に沿って適切に業務が進められているか」「業務プロセスに不備がないか」などを評価し、問題点があれば改善を促します。
例えば、売上拡大やコスト削減を目指しているにも拘わらず、業務の進め方に非効率な点があれば、その見直しが求められるでしょう。また、コンプライアンス違反や業務ルールの未遵守があれば、それが企業の信用や成長を阻害するリスクとなります。
このように、内部監査を通じて実際の業務と経営目標の整合性を評価し、必要な改善を進めることで、組織全体の動きを可視化し、目標達成に役立ちます。
経営者と内部監査の関わりについては、次の記事で詳しく解説しています。
【経営者向け】内部監査の役割と活用法|経営に貢献する監査のポイントを解説!
内部監査のプロセスの一例

ここからは、内部監査の具体的なプロセスを見ていきましょう。内部監査は、一般的に次の5つのステップを踏んで進められます。
- 監査計画の策定
- 予備調査の実施・監査対象部署への通知
- 本調査(内部監査)・監査調書の作成
- 監査報告書の作成・経営陣への報告
- フォローアップ
なお、上記のプロセスはあくまで一例であり、企業によって手順が異なることがあります。実施の際には、その点に注意しましょう。
ステップ1.監査計画の策定
監査を実施する前に、まずは監査の目標やスケジュール、対象部門などを明確にした監査計画を策定します。ここで綿密に計画を立てておくことで、監査の効率が向上し、重要なポイントを的確に押さえた監査が可能になります。
監査計画書には、主に以下の項目を盛り込みます。
- 監査スケジュール
- 監査体制
- 内部監査人(監査担当者)
- 監査対象部門
- 監査対象業務(監査テーマ)
監査対象業務に関しては、過去の監査結果や現在の経営課題からリスク評価を行い、問題が発生しやすい領域を優先的に設定するのが一般的です。テーマが曖昧なまま進めると、監査の方向性がぶれる可能性があるため慎重に検討しましょう。
また、この段階で監査人の選定も行います。監査人は、公平な立場から評価や報告を行う必要があるため、監査対象となる業務に直接関与していない、独立した立場の人材を配置することが求められます。監査の客観性を保つためにも、監査人の適切な選定が欠かせません。
ステップ2.予備調査の実施・監査対象部署への通知
監査計画がまとまったら、本調査の1カ月〜2カ月前を目安に対象部署へ事前通知を行い、予備調査を開始します。予備調査の目的は、監査対象となる業務の概要を把握することです。
具体的には、業務マニュアルや過去の監査記録、財務データなどを精査し、どのようなリスクが考えられるかを洗い出します。この時点で想定される問題を仮説として立てておくことで、本調査で重点的に確認すべき箇所を明確化できます。また、被監査部門としても、監査の趣旨を理解し、必要な資料を事前に準備できるため、監査当日に混乱を招くことなく対応できるでしょう。
なお、不正会計の疑いがある場合など、事前通知なしの抜き打ち監査を行うケースもあります。しかし、十分な準備を行うことが効果的な監査の実施につながるため、効率面を考慮しても事前通知を行うのが一般的です。
ステップ3.本調査(内部監査)・監査調書の作成
予備調査を終えたら、いよいよ本調査に移ります。
本調査では、担当者へのヒアリング、関連資料の確認、現場の視察などを通じて、業務がマニュアルに沿って適切に遂行されているかをチェックします。予備調査で気になった点や、現場で新たに見つかった問題があれば、積極的に掘り下げて分析しましょう。
この際、大切なのは「客観的な視点を持って監査を行うこと」です。問題点が見つかったにも拘わらず「状況を考えれば仕方がない」と見逃してしまっては、監査本来の目的が果たせません。被監査部門の状況を客観的な立場から判断して、根本的な課題を究明し改善につなげる必要があります。
監査の目的は、リスクを未然に防ぐことと、業務の改善につながる助言を行うことです。その視点を常に持ち、建設的な議論をしながら監査を心がけましょう。
本調査を終えたら、監査で得られた情報を整理し、業務の実施状況や問題点の有無、改善すべき点をまとめて監査調書を作成します。
ステップ4.監査報告書の作成・経営陣への報告
個々の監査の結果を監査調書にまとめた後は、内部監査全体に関する内容を経営者に報告するために、監査報告書を作成します。
報告書を作成する際は、経営層が会社の状況を正しく把握する工夫が必要です。過去の監査結果や他部門との比較を交えながら、現状がよいのか、それとも問題があるのかを明確に示すことが重要です。
そして報告書作成が済んだら、経営陣や監査を受けた部門に対し、監査結果を報告します。改善が必要な点が見つかった場合は、改善計画を提示し、どのように改善していくべきかを具体的に提案しましょう。その際、問題があると判断した理由や、今後の改善の方向性、実施スケジュールなどを詳しく説明することが求められます。各部門の責任者とも協議しながら実行可能な改善策を検討するのが理想的です。
ステップ5.フォローアップ
改善策を提案した後は、指摘した問題点や提案した対策が適切に実施され、状況が改善されているかを確認するためのフォローアップを行います。ここで重要なのは、監査を通じて明らかになった問題が放置されることなく、具体的な改善につながっているかを確かめることです。
そのため、監査人は対象部署がどのように改善を進めたのかをヒアリングし、関連資料を確認します。もし対策が十分に講じられていない場合は、その原因を探り、より実行しやすい改善策を再検討することが求められます。また、改善が一時的なものにならないよう、長期的な視点で継続的なチェック体制を整えることも大切です。
改善が適切に行われていることが確認できたら、結果をフォローアップ報告書を作成し、関係者に共有したところで内部監査の一連の流れが完了となります。
内部監査プロセスにおける注意点

内部監査を適切に進めるためには、以下4つの注意点を押さえておく必要があります。
- 内部監査人の独立性と客観性を維持する
- リスクに基づいた監査対象設定を行う
- 被監査部門との円滑なコミュニケーションを図る
- 三様監査の連携を図る
1つずつ詳しく見ていきましょう。
内部監査人の独立性と客観性を維持する
内部監査を実施する際に特に重要なのは、監査人が独立した立場を保ち、公正かつ客観的に評価できる環境が整っているかどうかです。
監査人が特定の部署や利害関係者の影響を受けてしまうと、監査の信頼性が損なわれ、正しい評価ができなくなります。そのため、監査部門は独立した組織として機能し、監査人自身も監査対象となる業務に直接関与していないことが求められます。
監査の独立性や客観性が損なわれるおそれがある場合には、監査計画の段階で、別の監査担当者に監査を依頼したり、外部の専門家による監査を活用したりします。このように、内部監査を適切に進めるためには、監査計画の段階から、各業務に対して独立した立場にある人物を監査担当者に任命するよう心がけましょう。
内部監査に兼務で対応する際のポイントは、次の記事で詳しく解説しています。
内部監査の兼務は可能?担当者選定から部門立ち上げ・外部活用まで徹底解説
リスクに基づいた監査対象設定を行う
内部監査のテーマは明確に定められているわけではなく、企業のあらゆる業務が監査対象になり得ます。そのため、監査計画を立てる際に、どの領域・業務を重点的に監査するかを慎重に決めることが重要になります。
ポイントとしては、組織内で発生している変化に着目するのが有効です。特に、過去の監査から状況が変わった領域はリスクが高まりやすいため、優先的に取り上げるとよいでしょう。
例えば、新規事業の立ち上げに伴い、社内の業務フローや責任分担が変更された場合、想定外のリスクが発生していないかを評価することが重要です。また、組織再編や部署の統廃合が行われた際には、業務の引き継ぎが適切に行われており不備が発生していないか、新たに発生した業務にリスクが潜んでいないかのチェックも必要でしょう。こうした変化のある領域は、問題点が潜んでいる可能性が高く、監査の成果を上げやすいと考えられます。
被監査部門との円滑なコミュニケーションを図る
内部監査を円滑に進めるためには、監査を受ける側の被監査部門との良好な関係を築くことも欠かせません。監査に対して過度な警戒心や抵抗感を持たれてしまうと、必要な情報が十分に得られず、適切な監査が行えなくなるおそれがあります。
監査の目的は、不備を指摘して責任を追及することではなく、業務の適正化やリスク管理の強化につなげることです。そのため、監査実施前に目的や意図を丁寧に説明し、被監査部門の理解を得ておくことが大切です。そして、被監査部門の業務を一方的に評価するのではなく、実務を担う担当者の意見にも耳を傾ける姿勢を持ちましょう。
監査の結果を伝える際も、業務の適正化やリスク管理の強化のために被監査部門が実践している対策を評価したうえで、改善が必要な点について、監査担当者から具体的な事例や改善案を積極的に提案することで建設的な対話が生まれやすくなります。
三様監査の連携を図る
内部監査の実施には、他の監査との連携を図ることも大切です。企業における監査には「内部監査」「監査役監査」「外部監査(会計監査人監査)」の3種類があり、これらは総称して「三様監査」と呼ばれています。それぞれ目的や役割は異なりますが、監査対象範囲には共通点も多いため、連携が不十分だと監査が重複したり、重要な点を見落としたりするリスクが生じます。
また、三様監査を効果的に機能させるためにも、内部監査人、監査役等、公認会計士の間でのコミュニケーションは欠かせません。例えば、内部監査では業務の適法性や運用上の問題点を確認しますが、その際に監査役等と情報を共有すれば、法令遵守の観点からのチェックを強化できます。また、公認会計士と連携することで、財務報告の信頼性や会計処理に問題がないかをより詳細に確認することも可能になります。
このように、それぞれが独立して機能しながらも、相互に補完し合うことで企業のリスク管理や内部統制の強化が実現できるのです。
内部監査の現状の課題とこれからの姿

日本企業における内部監査は、法令や規則に対応するための形式的な業務と捉えられることが多く、最小限のリソースで実施されるケースが少なくありません。その背景には、内部監査が直接的な利益を生み出す業務ではないという意識や、内部監査が形骸化している現状が影響しています。
しかし、企業の成長に伴い、事業リスクの種類や範囲が拡大するため、内部監査により日常業務の不正や非効率を確認することが重要になります。今後は、欧米のように経営戦略と連携し、業務の改善や人材育成の視点を取り入れた監査の在り方が求められるでしょう。
また、テレワークの普及により働き方が変化する中、内部監査の実施方法も見直しが必要になっています。リモート環境での監査を円滑に進めるためには、監査の独立性を保ちつつ、ITシステムを活用して関係部門との連携を強化することが不可欠です。これからの内部監査には、組織の業務や環境を深く理解し、デジタル技術を活用しながら柔軟に対応する力が求められます。
まとめ

本記事では、内部監査の目的や具体的なプロセス、実施時の注意点について詳しく解説しました。
企業を取り巻く環境は、法改正や市場の変化、社会情勢の影響を受けながら絶えず変化しています。それに伴い、リスクの種類や業務上の課題も移り変わっていくため、内部監査を一度きりの取り組みとして終わらせるのではなく、継続的に見直していくことが求められます。監査で明らかになった課題に適切に対応し、業務プロセスの改善を積み重ねることで、より安定した企業運営につながるでしょう。
この記事を参考に、内部監査の目的を改めて理解し、自社の業務に適した監査の進め方を検討してみてください。



