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内部統制システムとは?|会社法なども引用して解説!

内部統制システムとは、企業が業務の有効性を担保したり、法令を遵守したりするための体制です。会社法上、規模の大きい会社の経営者は社内に内部統制システムを構築する必要があります。
有効な内部統制システムは、会社ごとに異なります。そのため、経営者は一定の基本的要素を満たした内部統制システムをそれぞれ工夫して構築しなければなりません。
本記事では、内部統制システムとは一体何か、はじめての方でもわかりやすく解説していきます。会社法なども引用して解説していくのでぜひ参考にしてください。


「内部統制システム」とは

内部統制システムとは、企業がその目的達成において、業務の有効性及び効率性の担保、財務報告の信頼性の保証、法令遵守、そして企業資産の保全という4つの基本的目的を達成するために構築される体制です。
内部統制システムは、リスク管理、パフォーマンスの評価、情報伝達、そして監視活動などの要素を包含しており、企業のガバナンスを強化し、業務上の誤りや不正行為を未然に防ぐまたは発見して修正することを目的としています。
組織の各レベルでの徹底したコンプライアンスと、事業活動の持続可能性を保証するためには、内部統制システムの構築が不可欠です。
「内部統制」とは
内部統制とは、企業が健全かつ効率的に運営され、財務報告の正確性が保たれ、法令や内部ルールが遵守され、資産が適切に保護されるために、組織全体で実施される制度やプロセスです。
内部統制は組織の規模や業界、事業リスクに応じてカスタマイズされ、役員、従業員、さらには株主や投資家など、ステークホルダー全体の利益を保護するための重要な枠組みを提供します。
内部統制の有効な実施は、企業の持続可能な成長と社会的信用の向上に寄与します。
会社法上の内部統制システム
会社法において、内部統制システムは、「大会社」(資本金が5億円以上または負債の額が200億円以上の企業)である取締役会設置会社に対して、そのガバナンス構造と透明性を強化するために義務付けられています。
これにより、ステークホルダーの利益を保護し、企業の持続可能な成長を促進し、市場での信頼を維持するための堅固な基盤が提供されます。
金融商品取引法と内部統制システム
金融商品取引法では、特に上場企業に対して、高度な透明性と責任を確保するための内部統制の基準が設けられています。
金融商品取引法は、企業が公正かつ正確な財務情報を提供し、投資家やその他の市場参加者の利益を保護するため、内部統制報告書の年次提出を求めています。
金融商品取引法を通じて強化された内部統制は、市場の信頼を高め、企業統治の質を向上させ、より健全で透明性のある市場環境を促進します。

内部統制を行う4つの目的

近年、内部統制の構築は、経営者の重要な責務として認識されるようになってきています。
金融庁による定義では、内部統制を構築して運用する際の4つの基本的な目的が挙げられています。
4つの目的を適切に達成することにより、企業はより透明で信頼性の高い経営を実現し、持続的な成長を支えることが可能です。
業務の有効性及び効率性
業務の有効性及び効率性とは、経営の安定と改善を実現するための基礎となるものです。無駄な業務や低い効率の業務は、余分なコストを発生させ、経営状況を悪化させるリスクが増大します。
内部統制の導入により、情報共有の徹底やITの適切な活用が促進され、「ヒト・モノ・カネ」などの貴重な資源をより有効に活用することが可能です。
これにより、企業は効率的に事業活動の目的を達成し、持続的な成長を実現することができます。
財務報告の信頼性
企業の財政状態や経営成績を示す財務報告は、株主や投資家、銀行などの関係者に対する企業の信頼性を示す重要な情報源です。
虚偽の記載や粉飾決算は、これらの関係者に対して多大な損失をもたらすリスクがあります。
内部統制を適切に実施することで、財務情報の信頼性と透明性が向上し、企業の評価も高まることが期待されます。
正確な財務報告は投資家や銀行の信頼を得る鍵となり、企業の資金調達や事業展開をサポートできるでしょう。
事業活動に関わる法令等の遵守
事業活動の中で法令遵守は絶対的な要求とされます。社会的な信用やブランド価値を維持・向上させるためには、法令違反のリスクを最小限に抑えることが不可欠です。
近年、法令遵守の重要性が強調される中、内部統制は法令を遵守し続けるプロセスを支える重要な役割を果たしています。法令の遵守は、企業の持続的な経営と社会的責任を果たすための基本と考えられるでしょう。
資産の保全
資産は、企業の事業活動を支える基盤であり、有効な活用と保全が利益の維持・拡大に直結します。内部統制の導入により、企業の資産が適切に管理され、効率的に活用されることが促進されます。
資産の保全とは、不正なアクセスや損失、浪費から資産を守ることです。これを適切に行うことで、企業は持続的な事業活動を行い、安定した利益を追求することができます。
内部統制システムで決定しておくべきこと

内部統制システムとは、企業のガバナンス、リスク管理、コンプライアンスを強化し、企業の目標達成を支援するための体制です。
これは、組織の経営効率の向上、財務報告の信頼性の確保、法令遵守、そして資産の保護を目的としています。
企業が内部統制システムを構築する際には、以下の要素を確立し、明確にしておく必要があります。
- 情報の保存と管理取締役の職務執行に関わる情報の適切な保存および管理手段を設計し、情報が正確かつタイムリーに提供されるようにします。
- 損失の危機管理潜在的なリスクを特定し、それに対する対策を講じる体制を整備します。これには、リスク管理の原則を定め、緊急時の対応策を含むことがあります。
- 職務の効率取締役および従業員の職務が効率的に行われるための構造を検討し、目標達成を可能にするための資源が適切に配置されるようにします。
- 法令と定款の遵守従業員の職務執行が全ての関連する法令および会社定款に適合していることを保証するプロセスを確立します。
- 業務の適正企業集団全体での業務が適正に行われるための監督体制を構築します。これには、親会社や子会社との関係を管理し、各会社のパフォーマンスを評価するメカニズムを含みます。
- 株主への報告体制取締役が株主に対して適切に報告を行うための体制を整え、透明性と会社の説明責任を確保します。
- 監査役の独立性監査役が取締役から独立して業務を遂行できる体制を確立し、監査が客観的かつ効果的に行われることを保証します。
これらの要素は、内部統制システムの骨格を形成し、企業が持続可能な成長を遂げ、ステークホルダーに対する信頼を維持するために不可欠です。
適切な内部統制システムは、不正行為の予防、経営リスクの軽減、そして企業価値の最大化に寄与する重要な要素となります。
会社法における内部統制

会社法における内部統制は、企業の統治機構の一環として極めて重要です。
会社法では、株主から経営を委託された取締役会が、適切かつ効率的な企業経営を行うための基盤となる体制や機能を規定しています。
具体的なポイントは、会社法施行規則第100条で明示されているように、取締役の職務執行に関する情報の管理、損失の危機管理、効率的な業務遂行、法令遵守、業務の適正を確保する体制、そして監査役の独立性を保証する体制などです。
これには、コンプライアンスの確保、財務報告の正確性、業務の効率性と有効性の改善、そして法令遵守などが含まれます。
そのため、会社法に基づく内部統制は、企業経営の透明性と効率性を高め、ステークホルダーの信頼を維持するために不可欠なものです。
金融商品取引法における内部統制との差
一方で、金融商品取引法における内部統制は、主に証券市場の透明性と公正性を保持することを目的としています。
金融商品取引法は、投資家の利益を保護し、市場の信頼性の維持を目的としており、財務情報の正確性と完全性を重視しています。
金融商品取引法による内部統制では、会社が財務情報の社会的信頼性を確保するための体制を整備することが要求されます。
これには、適切な財務報告プロセスの確立、誤りや不正行為の防止および検出のための体制、さらには独立した監査機能の実施が含まれます。
公認会計士または監査法人がこれらの監査を実施し、報告書類の適切性と正確性を確認します。
結論として、会社法と金融商品取引法の主な違いは、前者が企業経営の全体的な適正と効率性に焦点を当てているのに対し、後者は証券市場と投資家保護に特に重点を置いている点です。
両者は異なる目的を持ちながらも、企業の持続可能性と成長、ならびに市場の健全性を確保するために、それぞれ重要な役割を果たしています。
金融商品取引法における内部統制システム

金融商品取引法に基づく内部統制システムは、核心に投資家の保護を置いています。
投資家保護の観点において内部統制は、単に企業の内部プロセスやコンプライアンスを監視するだけでなく、外部のステークホルダーである投資家に対する透明性と信頼性を高めるために重要です。
金融商品取引法第24条の4の4第1項によれば、上場会社は、投資家が適切な投資判断を下すための情報提供を保証する目的で、内部統制報告書の提出が義務付けられています。
金融商品取引法は、企業が内部統制の枠組みを確立し、内部統制を継続的に評価、必要に応じて改善することを強く推奨しています。
このプロセスは、企業が市場の変動や内部の欠陥に迅速に対応できる柔軟性を確保し、持続可能な成長のための基盤を構築することです。
また、金融商品取引法における内部統制は、会社法による内部統制システムとは異なる特徴を持っています。金融商品取引法では、財務情報の適正性や公正性を確保することに焦点を当てており、財務計算に関する書類が中心となります。
一方、会社法では、会社経営の健全性や効率性、法令遵守など、より広範な業務の適正を確保することが求められます。
このように、金融商品取引法に基づく内部統制システムは、投資家の信頼を維持し、市場の健全性を保つために設計された制度であり、企業の透明性、責任、そして統治の向上に寄与しています。
金融商品取引法については、次の記事を参照してください。
金融商品取引法における内部統制報告制度とは?会社法との違いから提出期限・記載事項まで解説!
内部統制システムに必要な6つのもの

内部統制システムは、企業の業績を最大限に高め、資産を保護し、法律や規制への準拠を確保し、そして不正行為を防止または検出するために不可欠なプロセスです。効果的な内部統制システムを維持するためには、以下の6つの要素が必要となります。
統制環境
統制環境の整備(環境の整備)は内部統制の基礎となるものです。
どんなに強力な統制の仕組みも、適切な環境に置かれなければ効果的な運用ができない可能性があります。
したがって、統制環境には、経営陣の倫理観や企業文化、さらには従業員の資質や教育も含まれます。
強固な統制環境は、全従業員が企業の目標やポリシー、手順に対して責任を持ち、それに従うことを確実にするための方針や手続きを設けることによって形成されるものです。
リスクの評価と対応
リスクの評価と対応は、企業が直面する潜在的なリスクを特定、分析、そして評価するプロセスです。
これには、市場の変動、業務の中断、技術の障害、あるいは不正行為など、さまざまなリスクが含まれます。
適切なリスク評価によって、企業はこれらのリスクを適切に管理し、必要な予防策を講じることができます。
統制活動
統制活動とは、特定の業務目標を達成するために設計されたポリシー、手順、そして手続です。
統制活動には、承認、認証、評価、および業務の分離などが含まれ、これにより不正行為の防止や検出、情報の精度や完全性、そして規制遵守が確保されます。
情報と伝達
情報とコミュニケーション(伝達)は内部統制の重要な要素です。
効果的なコミュニケーションによって、従業員は自分たちの役割と責任を理解し、必要な情報を適切なときに適切な方法で共有することができます。
これには、明確で時宜的な内部および外部コミュニケーションが不可欠です。
モニタリング
内部統制システムは定期的にレビューし、更新する必要があります。
このプロセスの実施目的は、システムが期待通りの結果を出しているか、また現在のビジネス環境や規制要件に適合しているかの検証です。
検証プロセスには内部監査が含まれ、不具合や弱点を特定し、必要な改善策を提案します。
内部統制のモニタリングについては、次の記事を参考にしてください。
内部統制のモニタリングとは|内部統制の基本からモニタリングの具体例まで公開
ITへの対応
現代のビジネス環境では、デジタル技術の進歩に適応し、これを内部統制プロセスに統合することがますます重要になっています。
デジタル化への適応には、最新の技術を活用して業務プロセスを自動化し、データ分析を強化し、サイバーセキュリティ対策を施すことが含まれます。
これにより、効率性と効果性が向上し、新たなリスクに対応が可能です。
内部統制実施義務の対象企業
会社法における内部統制を実施する義務があるのは、大会社である取締役会設置会社です。
大会社とは、資本金が5億円以上または負債の額が200億円以上の会社です(会社法2条6号)。この大会社のうち、取締役会を設置している会社は、内部統制の体制を整備し、効果的な運用を確保しなければなりません。
また、内部統制システムについての決定又は決議がある場合、事業報告で、その内容と運用状況の概要を記載し、定時株主総会で提出し、報告する必要があります。
企業の規模や業界、リスクの性質に応じて、内部統制の体制は異なる場合がありますが、全ての大会社である取締役会設置会社は、業務の適正性を確保するための適切な内部統制システムの実施が法律で求められています。

まとめ

内部統制システムは、企業が目的を達成するために欠かせないものです。
企業活動に欠かせないものであるため、経営者は自ら内部統制システムを構築しなければなりません。
内部統制システムを構築することにより、社内で不正が発生しにくくなったり、スムーズに監査を受けられたりできるようになります。
会社法上、内部統制システムの構築は大会社である取締役会設置会社にしか求められていませんが、会社の規模が大きくなればなるほど、適切な内部統制システムは重要性を増していきます。
Co-WARCについて
Co-WARCでは、内部統制構築、J-SOXの立ち上げ支援を含め、コーポレート課題全般の支援を行っています。
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