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決算遅延の3つの要因とは|決算早期化のメリット、実現のポイントも紹介

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公開日:2024.12.09
最終更新日:2025.06.25
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決算遅延の3つの要因とは|決算早期化のメリット、実現のポイントも紹介

本記事では、多くの上場企業が取り組んでいる「決算早期化」のメリット、「決算早期化」を実現するうえでの課題について解説します。「決算スケジュール」に遅延が生じた場合や「決算早期化」を実現するために必要な対応についても詳細に解説します。

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決算に関する期限

上場会社は、株主や投資家に対して決算の結果や経営状況を開示するため、決算短信を四半期ごとに作成して開示しています。「株式会社東京証券取引所の決算短信等の開示に関する要請事項」に記載されているように、決算短信の開示は、決算期末後の45日以内に行われる必要があります。

これが一般に「決算短信の45日ルール」と呼ばれるものですが、「株式会社東京証券取引所の決算短信等の開示に関する要請事項」には、決算期末後30日以内の開示がより望ましいとの記載があり「決算の早期化」は東京証券取引所の要請事項とされています。

決算早期化の必要性とメリット 

東京証券取引所からの要請もあり「決算早期化」に取り組む企業は増加しています。現在では「決算早期化」を月次ベースの業務改善を伴う経営課題の1つとして掲げる企業もあり、一般的に以下のようなメリットがあります。

迅速な経営戦略の検討や意思決定に資する

「決算早期化」により売上や利益などのデータを迅速に入手できるため、経営状況をタイムリーに把握できます。売上高や利益の予測、見込み等のスピーディーな検討が可能となり、経営計画や目標達成のための戦略検討、立案、意思決定のプロセスが効率化されます。

さらに、決算書データの早期入手により、事業上の問題や改善すべき事項を素早く検出し、改善策の検討及び実行のプロセスを速めることも可能となり、企業価値の向上につながる場合があります。

決算業務を見直すきっかけとなる

「決算早期化」には、決算業務の合理化及び効率化が必要です。その過程で、経理部門のみならず全社レベルで、各部門や担当者ごとの業務内容や、各部門間及び担当者間の業務フローを見直すことになります。

その際「決算早期化」を達成するためにボトルネックとなっている業務や業務フローを把握し、課題を可視化して社内で共有し解決を図ることで、決算業務の見直し及び改善が実現されます。

人件費の削減につながる

「決算早期化」の実施には、経理業務の効率化が必要です。効率化の方法には、各担当の業務フローの見直しや改善、業務の効率化、そして新しい会計システムやアプリケーションの導入などがあります。

業務改善や業務フローの見直し、システムの刷新や新システムの導入により、各経理担当者の作業量が減少し、残業時間の削減が見込まれます。また「決算早期化」により、経理部門の繁忙期が短縮され、経理担当者の人件費削減につながります。

外部からの信用や評価の向上につながる

決算早期化により、企業の財務情報の早期開示が実現されることは、金融機関、投資家、その他の利害関係者からの信用や評価の向上につながります。財務情報の早期開示は、金融機関や投資家等による融資や投資の迅速な判断に資することになります。

決算遅延の要因

各企業によって異なる複数の要因が影響して決算早期化の実現を困難にしている場合があります。ここでは、決算遅延の主な要因を紹介します。

経費等の申請プロセス

交通費や交際費、出張費等の経費申請プロセスがスムーズに進まない場合、決算早期化の阻害要因となります。例えば、経費申請手続において、紙によるアナログな申請方法を採用している、システム間の連携がとれずに各システム個別に管理しているなど、経理担当者のもとにデータが届くまでに時間がかかる場合は、決算早期化の実現が困難です。

地理的に事業所と本社が離れているような場合、物理的な紙をやりとりする時間が発生して承認に要する時間もかかります。また、データで申請書類のやりとりを行っている場合でも、会計システムの連携が取れない場合、決算早期化の実現を阻む要因となります。

勘定科目の確定プロセス

決算時には、勘定科目ごとの金額を経理担当者が漏れなく把握して、合計額を確定させる必要があります。勘定科目の確定プロセスに時間がかかる場合、決算早期化の実現を阻む要因です。

例えば、従業員の経費精算伝票や取引先からの請求書が期日を過ぎて届くことが常態化している場合、経費の確定が遅れ、決算早期化を阻害します。また、連結決算を実施している場合には、子会社や関連会社からの情報やパッケージデータが期日通りに届かない場合には、決算の早期化が難しくなります。

経理人員のキャパの問題

経理部門の人材不足も決算早期化を阻む要因です。月末月初は、処理すべき支払や入金が多く、経理担当者の負担が大きくなります。決算期には通常の経理業務に加えて、決算特有の業務まで行わなければなりません。経理部門の業務量に対して人員が不足する場合には、決算早期化の実現は困難となります。

決算遅延が起きた場合に問題となること

企業の決算は、不特定多数の利害関係者保護のための情報開示の点から決算発表や開示情報提出の期限があります。一方、税務コンプライアンスの点からも、税務申告及び納税に関して期限があり、遵守されない場合には、一定のペナルティがあります。

適時開示

決算手続の遅延により、決算内容等の確定時期に大幅な遅れが見込まれる場合(期末から45日を超え開示を行う見込みとなった場合など)には、決算発表の延期が生じる主な理由(決算作業又は監査手続に影響を与えている主な事由、当該事由の解消の見込みなど)についての適時開示が必要です。

有価証券報告書の提出に関しては、事業の年度が終了した3カ月以内の提出が義務付けられています。その期日から1カ月経過後も提出が間に合わないと遅延となり、上場廃止の基準に該当することになりますので、注意が必要です。

税務上のペナルティ

決算手続の遅延により、税額の計算が遅れ、税務申告期限(決算日の翌日から2カ月以内)を過ぎて申告をした場合(期限後申告)には、ペナルティとして延滞税がかかります。

延滞税は、申告期限の翌日から実際に納付した日までの日数に応じて、納付すべき税額の7.3%の税率(申告期限の翌日から2カ月以内に納付した場合。2カ月を超えて納付した場合は14.6%)が課されます。

さらに、税務調査が入るまでに税務申告が行われない場合には、無申告加算税(納めるべき税金の50万円以下の分に対して、納めるべき税額の15%、50万円を超える部分に対しては20%)が課されます。特に悪質と判断された場合には重加算税(納めるべき税額の40%)が課されることもありますので、留意が必要です。

決算早期化実現のために必要なこと

決算早期化の実現には、経理部門だけでなく、会社組織全体で対策を講じて意識を高めることが必要です。その方法は、内的な努力による業務改善から経理DX推進による業務環境の根本的な改善まで含まれます。

月次決算の早期化(業務の見直し)

まず、決算業務の見直しから検討します。年次決算は、その月の通常の月次決算業務に続いて実施されるため月次業務の効率性を見直すことが重要です。

はじめに、業務内容や業務プロセス、従来からかけている工数などを洗い出します。そのうえで、業務フローを見直し、業務圧縮できる工程や作成する資料の合理化、ペーパーレス化等により効率化できるポイントを検討します。また、業務を定型化してミスを減らすために、チェックリストやマニュアルの整備を行うことも有効です。

勘定科目にかかる資料の提出期限を早める

決算書上の各勘定科目の金額確定に時間がかかると、決算早期化は困難です。その対策として、他部署から受領する決算資料やデータ提出の締切期限をこれまでより早く設定することが必要です。

これは決算早期化に向けた各部門の意識改革にもつながります。ただし、単に書類の提出期限を早めるというだけでは現場の負担が増大する可能性があるため、同時に書類や帳票の電子化、提出フォーマットの統一のような業務効率改善のための手法も同時に検討することが求められます。

経理DXの導入

経理業務の根本的な効率化を図るため、経理DXの導入が有効です。会計システム(ERP)やソフトの導入及び刷新等も、経理業務のダイレクトな効率化につながる可能性があります。

具体的には、手作業でおこなっていた業務や紙で実施していた作業を会計システムの導入によりシステム化して、ペーパーレス化や業務の自動化を図ります。また、連結データをエクセルで作成しているような場合に、連結会計ソフトを部分的に導入して、作業の省力化を図ることも有効です。

このような経理DXの推進は業務の自動化を進めると同時にミスの削減にもつながり、決算早期化を大きく促進させる可能性があります。

まとめ

決算早期化の実現により、売上や利益等の財務データの早期入手が可能となり、目標達成のための経営戦略の検討や判断がスピーディーになります。また、速やかな決算情報の開示は、金融機関や投資家からの信頼を高めることにもつながり、税務申告期限の遵守は、税務コンプライアンスの維持や向上にもつながります。

さらに、決算早期化のための体制構築で、業務効率向上や社員の負担軽減による人件費の削減も期待されます。

決算早期化の実現には、組織を上げて体制を整え意識の向上を図ることが必要です。マンパワーに頼る改善改革と同時に、業務の根幹を形成する経理DXの推進は、現在の業務管理体制や組織としての業務遂行能力のレベルをさらに向上できる可能性があります。

既存の業務改善と同時に、現在の時流にかなった経理DXを推進するためのERP導入や刷新等の検討が求められます。


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