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上場準備や上場後の失敗を防ぐためには?失敗例付きで解説

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公開日:2025.02.13
最終更新日:2025.06.25
IPO準備
上場準備や上場後の失敗を防ぐためには?失敗例付きで解説

上場は決して簡単なものではありません。上場を成功させるためには、どのようなケースで上場が失敗するのかを把握しておくことが重要です。本記事では、上場準備における5つの失敗例を事例形式で紹介します。失敗を回避するポイントにも触れるので、最後まで読んでみてください。

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上場準備の失敗とは

上場準備の失敗とは、証券取引所が要求する手続や条件を満たせず、結果として上場を断念したり、延期せざるを得ない状況を指します。上場審査には厳しい基準が設けられているため、多くの企業が途中で断念することも少なくありません。

株式会社帝国データバンクが公開している「2023年のIPO動向」によると、2023年のIPO企業数は前年からわずかに増えて96社となりましたが、リーマン・ショック前の100社越えまでは回復せずという結果になっています。

IPO準備を進めている企業の数は非常に多い中、実際にIPOを成功させる企業は年間で約90社程度と、かなり狭き門だと言えます。

引用:株式会社帝国データバンク「2023年のIPO動向」

上場準備には多くの時間と費用がかかるため、上場準備は慎重かつ戦略的に進める必要があり、その過程で発生するあらゆるリスクを事前に評価し、適切な対策を講じることが重要です。

IPOについては、次の記事を参考にしてください。

上場準備の失敗例

ここからは、上場準備の段階でよくある失敗例として、以下の5つのケースを紹介します。

  • 失敗例①キーパーソンの退職
  • 失敗例②業績不振により上場できなくなる
  • 失敗例③監査人の適正意見が得られない
  • 失敗例④会社評価の低下
  • 失敗例⑤外的要因による延期

それぞれ事例形式で紹介するので、具体的な状況をイメージしながら確認してみてください。

失敗例①:キーパーソンの退職

上場準備中にキーパーソンが退職してしまった場合、その影響は計り知れません。キーパーソンとは、企業の経営戦略、財務、業務運営において中心的な役割を担い、重要な意思決定や投資家とのコミュニケーションに欠かせない人物や、監査法人・証券会社とのコミュニケーションなどの上場準備実務の主担当を担っている経理・管理部門のマネジャーといった人物です。このような立場の人が上場の準備段階で退職してしまうと、事業の継続性と情報の一貫性が損なわれ、上場プロセスにおける多くの計画が中断を余儀なくされます。

【具体例】

A社は、創業10年目を迎え、上場を目指していました。しかし、上場準備の最終段階で、CFOが突如退職を表明。このCFOは創業以来、同社の財務を支え、成長をけん引してきた人物でした。上場準備においても、緻密な財務計画を策定し、監査法人や主幹事証券会社との折衝を行うなど、重要な役割を果たしていました。しかし、CFOの稼働に負荷がかかってしまい、最終的に退職することになりました。

CFOの突然の退職により、財務計画の策定や上場準備に関する折衝など、引き継ぎがままならず、プロジェクトは停滞。企業はすぐに新CFOを起用したものの、前任者ほどの経験や人脈はなく、また、社内事情にも精通していなかったため、上場準備に時間を割くことができず、上場を延期せざるを得なくなったのです。

失敗例②:業績不振により上場ができなくなる

上場するためには、一定の財務基準を満たさなければなりません。赤字が必ずしも上場断念につながるわけではありませんが、成長が鈍化している場合や業績が振るわない場合は、上場審査で不利になり、上場が難しくなります。

なお、東京証券取引所(東証)の中で、利益の額の基準を設けていないのは、グロース市場だけです(TOKYO PRO Marketを除く)。ただし、グロース市場での赤字上場をするためには、一般的に戦略的に赤字であることと将来的な黒字のスケジュールを描く必要があります。業績不振は、景気悪化や競争激化など、外部要因の影響を受けることもありますが、経営戦略の誤りやビジネスを仕組み化できていないことも原因として考えられます。

【具体例】

B社は、創業7年目にして上場を目指していました。直近の2年間は、顧客数も増加し、順調に売上高を伸ばしていました。しかし、上場準備を本格化した年に、売上の成長が鈍化し、予算との乖離が大きくなっていきました。採用にコストをかけ従業員を増やしたものの、売上は想定以上に伸びず、黒字化が見込めないため、上場計画を延期することになりました。

IPOの条件については、次の記事を参考にしてください。

失敗例③:監査人の適正意見が得られない

上場申請には、監査法人による監査報告書が必要です。N-2期(直前々期)は「無限定適正意見」または「除外事項を付した限定付適正意見」、N-1期(直前期)は「無限定適正意見」が求められています。

財務諸表における虚偽記載や内部統制に不備があり、それらが是正されない結果監査人の適正意見が得られない場合は、上場申請を進められません。

【具体例】

C社は、上場審査の最終段階で、監査法人から適正意見を得られず、上場を断念せざるを得なくなりました。この企業は、会計処理に不備があったことが発覚し、監査法人から指摘を受けていたのです。しかし、対象取引の会計処理の網羅的な修正やその修正を確認するための監査の追加手続が間に合わず、監査法人は適正意見を表明できないと結論付けました。上場審査において、監査法人の意見は重要な判断材料となります。適正意見が得られない場合、上場はできません。

IPOにおける監査法人については、次の記事を参考にしてください。

失敗例④:会社評価の低下

会社評価の低下も、上場失敗の一因です。例えば、上場準備中に個人情報の漏洩が発生したり、違法なマーケティングで訴訟になったり、コンプライアンス関連の不祥事は上場においてノックアウトファクターになりえます。

近年は、ESG(※1)投資のように非財務情報を重要な評価材料として投資を行うケースも増えており、企業の社会的責任や倫理性が会社評価に大きな影響を与えています。会社評価が低下する原因は多岐にわたりますが、主に以下の点が挙げられるでしょう。

  • ガバナンス体制の不備
  • コンプライアンス違反

(※1)ESGとは「環境(Environmental)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の3つの領域を指し、企業が持続可能な経済活動を行うための基準や考え方。

【具体例】

D社は上場準備を進めていましたが、1つの品質管理の不備をきっかけにSNSで炎上し、会社評価が急落。この不祥事により、上場の見通しがたたなくなりました。上場審査においては、会社の経営状況だけでなく、企業倫理やコンプライアンスも重要な評価項目となります。不祥事があった場合、投資家は投資を控える傾向があり、上場が困難となる可能性があります。同社の場合は、経営不祥事の発覚に加え、適切な対応が遅れたことも問題となりました。

失敗例⑤:外的要因による延期

上場準備中に、自然災害や金融危機などの外的要因が発生した場合には、上場が延期になることもあります。たとえば、新型コロナウイルス感染症など、パンデミックのような事態が起こると、経済活動が大幅に停滞し、それが企業業績及び市場環境に悪影響を与える可能性があります。

こういった外的要因が発生すると、上場時に予定していた業績に追い付かず、想定株価を大幅に下回ったり、成長可能性の要件を満たせなかったりして、上場を延期せざるを得ない状況に陥るケースもあるのです。

上場準備の失敗を防ぐためには?

先述した通り、上場審査は厳しい基準を満たす必要があるため、多くの企業が途中断念を余儀なくされています。しかし、適切な対策を行えば、失敗のリスクを大幅に減らせます。

ここからは、前項で紹介した失敗を回避するためのポイントを解説するので、しっかり押さえましょう。

IPOの流れについては、次の記事を参考にしてください。

失敗例①の対策:採用の早期稼働・職務分掌

キーパーソンの突然の退職は、プロジェクトに大きな打撃を与えます。そのため、上場準備においては、早期から採用活動を行い、充分な人材を確保することが重要です。

特に、財務、経理、法務などの専門職は、人材獲得競争が激化しているため、早めの対策が欠かせません。また、各部署の職務分掌(※2)を明確にし、個人のみに依存しない体制を構築する必要があります。

場合によっては、外部の専門家やコンサルタントの力を借りることも検討しましょう。

(※2)職務分掌とは、組織内での役割や責任を明確に定め、各メンバーや部署に具体的な仕事内容を割り当てること。

失敗例②の対策:組織の仕組み化

業績不振を防ぎ、上場を成功させるためには、組織の仕組み化を推進することも重要です。そもそも組織の仕組み化とは、組織の目標達成のために必要な役割分担、意思決定プロセス、情報共有の体系を構築することです。

たとえ上場準備が順調であっても、業績が悪化すれば上場スケジュールの延期は避けられません。実際に「業績が予定通りではないため、スケジュールを1年後ろ倒しにする」という決定はよくあることです。

業績不振の原因は内部要因と外部要因に分けられますが、内部要因として、組織の仕組み化が不十分であることが大きな問題の一つです。そのため、業績不振を避けるためには、業務フローを明確にし、権限を適切に移譲し、社員教育を徹底するなど、組織の仕組み化して拡大できる体制を整える必要があります。

失敗例③の対策:経理体制の強化

上場審査では、適正な会計処理が行われているかどうかが厳しく審査されます。そのため、上場準備の段階から、経理体制を強化し、会計処理の正確性を確保することが重要です。

具体的には、以下のような対策が有効です。

  • 専門性の高い経理担当者を採用する
  • マニュアル作業を自動化して、業務を効率化する
  • コンサルティング会社に相談する

特に税効果会計の適用、収益認識基準の整理などは専門性が高く、売上や利益の金額に広範な影響を及ぼすので、監査法人とのコミュニケーションを慎重に行う必要があります。

失敗例④の対策:管理体制の整備

上場審査の通過や上場後の持続的な成長を実現するためには、コーポレートガバナンス(※3)を確立するために管理体制を整備することも大切です。

投資家は、企業の将来性を判断する際に、財務状況だけでなく、コーポレートガバナンスなども重要な要素として考慮します。しっかりとした管理体制を構築している企業は、不祥事リスクが低いという印象を与え、投資家からの信頼を獲得しやすくなるでしょう。

ただし、上場に向けて管理体制をいきなり整備しようとすると、経営の自由度が下がり、業績が低迷してしまう可能性があります。体制変更は段階的に行うことを推奨します。

(※3)コーポレートガバナンスとは、企業が透明性、公正性、説明責任を持って経営を行い、株主や他の利害関係者の利益を最大限に尊重するための仕組みのこと。

上場準備開始前にフローをしっかりと確認しておく

上場準備には、多くのステップがあり、それぞれに必要書類や手続があります。事前にフローをしっかりと確認しておかないと、準備が遅れたり、不備が生じたりする可能性があります。そのため、上場準備を開始する前に、証券取引所や証券会社から提供される資料を参考に、必要な準備項目やスケジュールを明確にしておくことが重要です。

【事前に確認しておくべきポイント】

  • 上場準備全体のスケジュール
  • 必要な書類、指摘されやすいポイント
  • 必要な人材と資金
  • 外部機関との連携

これらの点を事前に確認しておくことで、スムーズな上場準備を進めることができます。上場準備は、時間と労力のかかる作業ですが、しっかりと対策を行えば、失敗のリスクを大きく減らせるでしょう。

IPOの準備については、次の記事を参考にしてください。

上場を目指す前に確認すべきポイント

上場は、企業にとって大きなチャンスとなる一方で、多くのリスクも伴います。上場を目指すかどうか判断するためには、以下のような点について慎重に検討し、専門家の支援を受けながら、長期的な視点に立って判断することが大切です。

まとめ

本記事では、上場準備によく見られる失敗例と、それらを回避するための具体的な対策を解説しました。

Co-WARCでは、上場を目指している企業様に向けて、コンサルティングサービスを提供しています。

上場のプロセスは企業ごとに異なります。Co-WARCでは、上場準備に必要な有益情報を適切に提供することで、起こりうるトラブルを事前に防ぎ、企業の健全かつスムーズな上場実現を支援。プロジェクトマネジメントから手を動かす作業まで、総合的にサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。


Co-WARCについて

Co-WARCでは、内部統制構築、J-SOXの立ち上げ支援を含め、コーポレート課題全般の支援を行っています。

何からすれば良いかわからないから相談したい、具体的な支援内容を知りたいなど、どんなお悩みでもお気軽にご相談ください。

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