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IPOにおける監査法人の役割を解説:選び方から契約のタイミングも!

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公開日:2025.01.30
最終更新日:2025.06.25
IPO準備
IPOにおける監査法人の役割を解説:選び方から契約のタイミングも!

IPO(新規株式公開)は、企業が成長を加速させるための重要なステップです。しかし、このプロセスを成功させるためには、信頼性の高い財務情報の提供と適切な準備が必要です。監査法人は、財務情報の信頼性を確保し、企業が投資家に対して透明性を維持するための重要な役割を担っています。本記事では、IPOにおける監査法人の具体的な役割、選び方、最適な契約のタイミングについて詳しく解説します。

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IPOにおける監査法人の重要性

IPO(新規株式公開)プロセスでは、公認会計士または監査法人(一般的に監査法人に依頼することが多いため、以下「監査法人」と表記します)による監査証明が必要です。

監査法人は、上場企業が公表する財務諸表等に重要な虚偽表示がないことを証明することで、投資家保護を図ります。IPOを目指す企業にとって、監査法人の監査証明は必須であり、その成功において重要な役割を果たします。

監査法人の役割

IPOを目指す企業にとって、監査法人は無くてはならない存在です。監査法人は、企業の財務情報の信頼性を確保するのみならず、IPOプロセス全体を支えるための専門的なサポートを提供します。

企業は、監査法人と協力しながら、IPOに必要な要件を満たすための準備を進める必要があります。以下では、監査法人の具体的な役割を解説します。

監査証明業務

監査証明業務は、公認会計士の独占業務です。この証明を得ることで、企業は財務情報の信頼性を投資家に保証できます。

  • 会社法監査: 会社法に基づき作成される「計算書類」の適法性に関する意見表明を行う監査です。資本金が5億円以上または負債金額が200億円以上の企業に義務付けられています。
  • 金融商品取引法監査: 金融商品取引法に基づく監査です。財務書類の適正性に関する「財務書類監査」と内部統制報告書の適正性に関する「内部統制監査」に分けられます。いずれも上場企業に義務付けられています。

非監査証明業務

監査証明業務以外にも、監査法人は以下のような業務を提供しています。

  • IPO支援業務: 企業がIPOに向けての準備を進めるために、戦略的なアドバイスを提供します。これには、IPOに必要な書類の作成支援や、企業の財務戦略の見直しが含まれます。
  • 内部統制構築支援: 企業の内部統制システムを強化するために、専門的な支援を提供します。これにより、企業は適切なリスク管理を行い、財務報告の信頼性を維持できます。
  • コンフォートレターの作成: IPOプロセスにおいて必要となるコンフォートレターを作成します。この文書は、企業の財務情報の信頼性を証明するものであり、投資家に対する重要な情報提供手段となります。

IPO前後で監査法人が行う業務

IPOは、企業の成長を加速させるための重要なステップです。しかし、このプロセスには準備と多くの課題が伴います。

特に上場会社は投資家保護の観点から、公表される財務情報について、監査法人の監査証明が必要になり、企業は正確かつ適時に財務報告を行うプロセスの構築が求められます。そのため、監査法人はIPOプロセスを通じて、以下の業務を上場準備会社に提供します。

ショートレビュー

ショートレビューは、IPO準備の段階で実施される短期間の調査であり、企業の内部管理体制や会計制度の整備状況を評価するプロセスです。この調査を通じて、企業が上場準備を進める上での課題を特定し、必要な改善策を提案します。

内部管理体制の評価

監査法人は、企業の内部管理体制が適切に機能しているかを確認します。具体的には、業務フローの効率性、リスク管理体制、コンプライアンス状況などを評価します。

会計制度の整備状況

企業の会計制度がIPOに必要な基準を満たしているかを検証します。これには、財務報告の正確性や透明性の確保が含まれ、必要に応じて改善点を提案します。

課題の抽出と提案

ショートレビューの結果、企業の上場準備における課題が明らかになります。監査法人は、これらの課題を解決するための具体的なアクションプランを提示します。これにより、企業は効率的に上場基準を満たす準備を進めることが可能になります。

ショートレビューは、企業がIPOに向けた基盤を整えるための重要なステップであり、監査法人が上場に必要な課題を洗い出す役割を担っています。

内部統制制度構築のサポート

内部統制制度(J-SOX)の構築は、上場後の適切なガバナンス維持に欠かせないプロセスです。監査法人は、企業が内部統制報告制度を整備できるよう支援し、効果的な内部統制制度の構築を助言します。

内部統制の評価と整備

監査法人は、企業の現行の内部統制体制を評価し、改善が必要な部分を特定します。これには、業務プロセスの効率化、不正防止対策の強化、情報システムのセキュリティ向上が含まれます。

リスク管理の強化

企業が潜在的なリスクを的確に管理できるよう、リスク評価手法やモニタリングプロセスの導入を支援します。これにより、企業は迅速かつ的確にリスクに対応できるようになります。

教育とトレーニングの提供

社員のコンプライアンス意識を向上させ、内部統制の重要性を理解させる教育プログラムを提供します。この取り組みにより、企業全体で統制意識を高め、ガバナンスを強化する文化を醸成します。

監査法人の指導により、企業は効果的な内部統制制度を構築し、上場後の持続的な成長を支える基盤を整えることができます。

財務諸表監査

IPOに向けて、企業は過去の財務状況を正確に報告する必要があります。監査法人は、直前々期(N-2期)から直前期(N-1期)にかけての財務諸表を監査し、一般に公正妥当と認められる企業会計基準に基づいた適切な財務報告を保証します。

具体的には、財務諸表が企業会計基準を遵守し、重要な虚偽表示がないことを確認します。また、必要な修正箇所について指導や助言を行います。

これにより、投資家は信頼できる情報を基に投資判断を下すことが可能になります。財務諸表監査は、企業の信頼性を向上させ、IPOの成功を支える重要なプロセスです。

コンフォートレターの作成

コンフォートレターは、監査法人が引受証券会社に対して発行する書簡であり、発行会社の財務情報の信頼性を確認するために作成されます。この書簡は、IPOプロセスにおいて重要な役割を果たします。

コンフォートレターの作成は、企業の財務情報の透明性と信頼性を確保し、IPOの成功を支援するための重要なステップです。

上場後の監査

上場後も、監査法人は企業の財務情報の信頼性を維持する上で重要な役割を果たします。これには、四半期報告書や有価証券報告書の監査・レビューが含まれます。

四半期報告書のレビュー

監査法人は、企業が四半期ごとに提供する財務情報をレビューし、その正確性と透明性を確認します。これにより、企業は継続的に投資家に対して信頼できる情報を提供することが可能になります。

有価証券報告書の監査

上場企業は、定期的に有価証券報告書を提出する義務があります。監査法人はこれらの報告書を監査し、企業が法的基準を満たしていることを確認します。

内部統制監査

上場企業は、内部統制報告書の提出も求められます。監査法人は、その内容が適正であるかを監査します。ただし、新規上場後の最初の3年間については、内部統制報告書に対する監査法人の監査が免除される場合があります。

上場後の監査法人によるサポートは、企業が市場での信頼性を維持し、持続的な成長を実現するための重要な要素です。監査法人は、企業の適切なガバナンスと透明性を維持するためのパートナーとして、上場後も継続的に支援を行います。

内部統制報告書に関する詳しい情報は、こちらの記事で解説しています。

内部統制監査報告書とは│報告書の内容や内部統制報告制度の注意事項を解説

監査法人の選び方

IPOを目指す企業にとって、監査法人の選定は極めて重要です。監査法人は、企業の財務情報の信頼性を確保し、上場準備を支援する重要なパートナーといえます。

選定プロセスでは、企業の特性やニーズに合った監査法人を見極めることが求められます。監査法人の選び方にはいくつかの重要なポイントがあり、それらを理解することで、企業はIPOプロセスをスムーズに進めることができます。以下では、監査法人の選定方法について詳しく解説します。

監査法人の規模から選ぶ

監査法人には、大手から中小規模までさまざまな選択肢があります。それぞれに特徴とメリットがあり、企業は自社の規模やニーズに応じて最適な監査法人を選ぶことが重要です。

大手監査法人

大手監査法人は、グローバルなネットワークと豊富なリソースを備え、複雑な案件にも対応できる体制を整えています。特に、多国籍企業や大規模プロジェクトをサポートするのに適しており、以下のような強みがあります:

  • グローバルなネットワーク: 世界各地に広がるネットワークにより、海外展開を目指す企業が国際基準に準拠した監査を受けることができます。これにより、グローバル市場での競争力を強化できます。
  • 大規模チーム編成: 専門性の高いスタッフで構成されたチームが、複雑な課題にも迅速かつ的確に対応します。特にクロスボーダー案件や多様な業界におけるニーズに応えます。
  • 専門部署の活用: 税務(TAX)や財務アドバイザリーサービス(FAS)など、ファーム内の専門部署を活用し、包括的なサポートを提供します。

中小監査法人

中小規模の監査法人は、大手とは異なるメリットがあり、特にコストパフォーマンスを重視する企業や、個別対応を求める企業に適しています:

  • コストパフォーマンスの高さ: 一般的に大手よりも費用が低く、限られた予算でIPO準備を進める中小企業にとって魅力的です。
  • 柔軟なサービス提供: 中小規模の監査法人は、企業の特性やニーズに応じた個別対応が可能であり、細やかなサポートを期待できます。

大手監査法人のメリット

大手監査法人は、グローバル展開や複雑なビジネスモデルを持つ企業にとって大きなメリットがあります。

  • グローバルな展開への対応: 国際基準に基づいた監査を提供できるため、海外市場への進出を視野に入れる企業には最適です。
  • 高度な専門性と迅速な対応: 業界知識の豊富な専門家チームによる対応で、複雑な課題にもスムーズに対処できます。
  • 包括的なサービス: 財務や税務などの分野に特化したチームのサポートにより、企業の幅広いニーズに応えます。

中小監査法人の特徴とメリット

中小監査法人は、コスト効率を重視する企業や、より細やかなサポートを求める企業に適した選択肢です。

  • コスト効率の良さ: サービス料金が比較的低いため、IPO準備段階で限られた予算内での対応が可能です。
  • 柔軟な対応: 中小企業の特性に応じたきめ細かいサービスを提供し、クライアントのニーズに寄り添った支援を行います。

監査法人の選定は、企業がIPOを成功させるための重要なステップです。大手監査法人と中小監査法人には、それぞれ異なる特徴とメリットがあり、企業のニーズや規模に応じて最適な選択を行うことが重要です。適切な監査法人を選ぶことで、企業は上場準備を円滑に進め、IPO後の持続的な成長を目指す基盤を築くことができます。

実績から選ぶ

監査法人を選定する際、過去の実績は重要な指標の一つです。監査法人がこれまでどのような成果を上げてきたかを確認することで、適切なパートナーを見極めることができます。具体的には、以下の点に着目することが推奨されます。

過去のIPO支援実績

監査法人がこれまで手掛けたIPOプロジェクトの数や成功率を確認します。豊富な実績を持つ監査法人は、IPO準備において企業に信頼性の高いサポートを提供できる可能性が高まります。また、IPO支援に関する具体的な成功事例がある場合、それらを参考にすることで、監査法人の能力や強みをより深く理解することができます。

監査対象企業のリスト

監査法人が現在監査している企業のリストを確認し、自社と類似する業界や規模の企業が含まれているかを調べます。同様の業界や規模の企業を経験している監査法人であれば、自社の特性に応じた適切なサポートが期待できます。特に、特定の業界における専門知識を持つ監査法人は、業界固有の課題に迅速に対応できる可能性があります。

過去の実績をもとに監査法人を選定することで、企業は信頼性と専門性を兼ね備えたパートナーを見つけることができます。これにより、IPO準備をスムーズに進め、上場後の持続的な成長を支える基盤を構築することが可能です。

なお、IPOにおいて監査法人とともに重要な役割を果たす主幹事証券会社の選び方については、別記事で詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

監査法人ごとの2023年の上場数

2023年には96件の新規上場があり、そのうち大手監査法人が担当した件数は合計46件、大手以外の監査法人が担当した件数は50件でした。

具体的には、トーマツEY新日本あずさ太陽PwC京都といった監査法人が上場をサポートしており、それぞれの実績を以下にまとめています。このデータは、監査法人を選定する際に重要な参考材料となります。

上場準備における監査法人の選定タイミング

企業が監査法人と契約を締結するのに最適なタイミングは、上場準備を開始する初期段階です。監査法人は、財務情報の信頼性を確保し、上場準備プロセスをスムーズに進めるための重要なパートナーです。

そのため、監査法人の実績をよく確認し、企業のニーズに合った監査法人を選ぶことがIPO成功への第一歩となります。早めの契約検討を行うことで、上場準備を効率的かつ確実に進めることが可能です。

監査法人の実績や特徴を十分に比較検討し、最適なパートナーを見つけることが、IPOプロセス全体を成功させる鍵となります。必要に応じて、さらに具体的なデータや詳細情報をご確認ください。

監査法人上場件数
トーマツ14件
EY新日本12件
あずさ10件
太陽6件
PwC京都4件
その他の監査法人50件

監査法人と契約を締結する最適なタイミング

IPO準備を進める企業は、遅くとも直前々期の期首までに監査法人と契約を締結することが推奨されます。このタイミングで契約を行うことで、早期にショートレビューや内部統制の整備を開始することが可能になります。

早期契約が必要な理由

監査法人による財務諸表の監査や内部統制の整備には、一定の時間がかかります。さらに、これらのプロセスを通じて企業が上場審査基準を満たすためには、十分な準備期間が必要です。

一般的に、IPO準備には約2年から3年の期間が必要とされています。この間、監査法人との連携を早期に始めることで、以下のようなメリットが得られます:

  • 財務諸表や会計基準の適合性を早期に確認できる
  • 内部統制制度を整備し、上場審査で求められる基準に対応できる
  • 予期せぬ課題が見つかった場合でも、十分な時間をかけて解決策を講じることができる

監査法人との契約は、IPO準備を計画的に進めるための重要なステップです。早めの契約締結により、上場に向けたスムーズなプロセスを実現し、必要な基準を満たす体制を確保することができます。

まとめ

監査法人は、IPOプロセスにおいて企業の財務情報の適切性と透明性を確保し、上場準備を支援する欠かせないパートナーです。監査法人の選定にあたっては、規模、専門知識、実績、そして企業のニーズとの適合性を総合的に検討することが重要です。

契約のタイミングは、上場準備の初期段階が理想的です。早期に契約を締結し、信頼関係を構築することで、IPO準備を計画的かつスムーズに進めることが可能になります。

当社では、これまで多くの企業のIPOを支援してきた経験を活かし、各企業に適した監査法人選定をサポートいたします。また、監査法人の評判や実績についてもお伝えできますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。


Co-WARCについて

Co-WARCでは、内部統制構築、J-SOXの立ち上げやIPO支援を含め、コーポレート課題全般の支援を行っています。

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